小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

ゴッド・モンスター・レクイエム(ミナとユリス)

INDEX|27ページ/46ページ|

次のページ前のページ
 

 「ミナは、力が全てだと思うのかい?ララが教えなかったかい?力を持ち得た事自体は重要ではないと。もっと大事なことが在るから、ぼくらに戦う意味があるんだって。力に脅え、ひるむのは恥ずかしいことではない。しかしそれでも立ち向かわなくてはならない事もある。だから、力の暴力だけには負けたくない。だから、力を利用して、使わせてもらうだけだ。ミナなら分かるはずだ。力がどこからくるか。そしてどのように使うべきか。相手の力がいかに強大であろうとも、恐れることは無い。我らはみんな、ミナの授かりし力こそが、なにものよりも尊いと信じている。」
 「あたしが授かりし力?」
 ミナはまたキョトンとした。言っていることが抽象的でイマイチぴんとこないのだ、しかしその言葉の不思議な力がミナに降り注いだ。
 「そう、まだ眠っている力さ。」
 「そんなものがあるの?」
 「それはきみ次第さ。」
 ミナは、あたしが強く成りさえすれば勝てるんだ。と思い込んだ。
 気弱なミナはもうどこにも無かった。これでいいんだ。戦場へ赴くユリスの許しが降りたのだと確信した。ユリスの許しさえ降りれば、ミナに怖いものなど在るはずが無かった。
 それが誰だか知らないが、誰であろうとミナにとっては恐れるにあたいしなかった。
 それこそが、ミナの力の根源であり、デスプをして、底が見えない。パワーゲージ測定不能。こんな恐ろしい奴は初めてだ。と言わしめた理由でもある。
 翌日ロンから、呼び出されたミナはデスプに乗せられて、ラボチャイルドの1つのクラス、スリーオーワンのバトルルームを再現した設備のある、倉庫街に連れて行かれた。
 眠い目を擦りながら、降りるとロンが笑顔で出迎えた。
 大きな体がミナを挨拶代わりに抱きすくめた。完全にミナは宙に浮いてしまった。
 女性にこのようなことをする習慣はロンには無いのだがミナだけは別のようだ。
 ミナはまだ目覚めておらず、ロンが居るけど、ここは何処なのかなー、程度のことでしかない。
 今日は休みが取れたのでララとショッピングに行く予定をしていたのだが、ララの都合が悪くなったので、ロンからテレックスが入ってきてロンがちょっと付き合ってくれ。と言うので、了承した。夢の中でだが。
 ララは、すぐにデスプに連絡を取り、迎えに来てくれる様頼んでいるところまでは夢に出て来た。そして、気が付くとここに居た。
 ララがどうやって、デスプのコックピットにミナを押し込んだのかはミナの記憶には無い。
 ロンが指を鳴らすと大きな倉庫の扉が開き、二人は中に入った。すぐに扉は閉じたが中は空っぽで一台の端末機が床からせり上がってきた。
 「ここは極秘にスリーオーワンのバトルルームをより現実に則した形で再現している。もし我々が本気で現実空間で戦えば、都市全体を破壊しつくす激戦になる為、我々を仮想空間に送り込み現実空間と同じ条件で戦わせることを目的として造られた。
 データだけの世界だから、いくら破壊しても元に修復出来るし、そこで殺されても、現実に戻ってくれば、かすり傷一つ負わずに生き返る。これこそが本物の最強兵士養成マシンだ。しかしエネルギーの消費は現実世界と同じである。」
 「さらに、仮想と現実をリンクさせることも技術的に可能だが、トレーニングマシンに必要ない機能だからそのような機能は無い、安心して死んで良いぞ。」
 ミナは寝ぼけまなこで興味津々である。
 「ふーん、ねーロン、バンブーランドもあるの?あたしあそこのジェットコースターに乗りたい。それから・・・」
 ミナは遊びに来たつもりでいるらしい。確かにロンの説明不足だった。
 「ミナ?それも名案だが、せっかくのトレーニングマシンなんだから、俺とお手合わせを願えないかい?もし俺に勝てたら、ユリスはきっと驚くぞ、どうしてか判るかい?」
 ロンは腰を屈めて、ミナを覗き込んだ。
 「ロン、どうして?」
 ミナには皆目見当が付かなかった。
 「スリーオーワンで五本の指に入るファイターがこの俺さ。ユリスでさえ、そうは勝てない。五回やれば三、四回は俺が勝ちをいただく。これはゲームなんかじゃない、実践なんだ。本当の力量が試される。どうだい面白そうだろ?もし一回でも俺に勝ったら、ユリスの奴、腰を抜かして驚くぞ。」
 ミナの目が輝いた。眠気は何処かにふっとんでしまい、ミナの闘争心に火が付いた。
「やるやる、ロンを負かして、ユリスのカタキをとってやる。それから、ジェットコースターに乗りたい。ロン、いいでしょ?」
 ロンは今は、無邪気にはしゃいでいるが、ミナが本気を出した時の恐ろしさをよく理解している。手抜きは無用の相手である。
「お目覚めのようだね。お姫様?では入る。」
 そう言うと端末機に手を置いた。空間が一度歪んで、元に戻った。一見なにも変わりが無いように思えた。
 しかし、ここは、既に仮想空間である。
 何も無かったはずの倉庫の壁が棚になっていて中央に移動してきた。
 そこには数々の銃や戦闘用機具が陳列してあった。
 すべてはエスパー用に開発されたもので、一般の物とは、形も機能も異なるものばかりだった。
 ミナは、それらを一つ一つ手に取った。
 身震いするほどの過激な情報がミナにインプットされた。
 全てを理解し、状況に応じた選択をした者が勝者となる。
 しかし兵器のポテンシャルはそれを持つものの力量に負うところが大きい。それを見抜けず選択を誤れば負ける。
 ミナがかろうじて扱える物は古典的な弾丸を使用したタイプの銃とブーメランを応用した武器、そしてもっとも破壊力のある、エナジーアローだ。
 しかしどのように使うのか判らないものも幾つかあった。手に持つと恐怖心が体中を駆け抜けて、二度と触れることすら出来ない兵器もあった。その中の一つに何の変哲も無い、一本の刀があった。
 ミナはその刀が気になってしょうがない。しかし恐ろし過ぎて手にすることが出来なかった。
 「これは何?」とロンにたずねた。
 ロンはにやりとして答えた。
 「これに目を付けるとはさすがだな。だが誰も正しく扱えた者は居ない。どのように使うのかも分からない。一見はただの日本刀だ。しかもかなりの年代物だ。切れ味だけは超一級品だが作者さえ分からない。
 ただ無敵のツルギと言う噂だ。ララの話では、幻の必殺技、悪魔返し。マッドリターン・デボーに使うらしい。スリーオーワンの中では唯一ユリスなら使いこなす能力があり、使いこなしただろうが奴はこの剣に目もくれなかった。」
 「なぜ?もったいない。使えるんでしょ。」
 「魔剣は人を選び、自分の意思で動くそうだ。真の持ち主でない者が手にすると、ろくなことしか起きないそうだ。」
 「フーーーん。そんなもんなんだ?」
 「ユリス、曰く、『この剣の持ち主はぼくではない。』そうだ。」
 「じゃ、誰なのかしら?」
 「そんなこたーー、しらん。『触らぬ神にタタリ無し、』なんだと。事実、命の掛かった戦闘にこの剣を使おうなどと考えること自体、危険極まりないナンセンスとされてきた。」
 こともあろうに、ミナはその剣を鞘から抜いた。そして刀身を見た。
 「なっ、何してんだミナ?・・・やめろ、危険過ぎる。」
 ミナは、放心状態で、呟いた。