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ゴッド・モンスター・レクイエム(ミナとユリス)

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 完敗である。
 なにが秘密探偵だ。ガキのお使いに過ぎないじゃないか。頭をなでてもらって、駄賃の飴をしゃぶらされて、幕引きかよ。
 許せない。人を虫けらの様に扱うあいつらを絶対に許せない。ゾフィー、そしてマザーガイヤ。
 ミナに初めて本当の意味での闘争心が目覚めた。
   反撃の狼煙  戦闘準備
 カードA9は処理済フォルダーに納まったが、ミナのカードX101、アンドロイド犬ロッキー捜索の件は、いまだに、未解決のままだった。
 ミナは、ビルにパートナーの依頼をした。
 ビルは、カードA9より更に危険度が高いカードX101を快く引き受けてくれた。
 カードX101は、対ゲリラ生物兵器の捜索であり、しかもゾフィー率いるソルジャー部隊との争奪戦になる可能性さえ秘めていた。そのこともミナはつげている。それにも関わらず、二つ返事でOKを貰った。
 これほどの危ない仕事は、元特殊部隊の工作員、ブラックウィングコマンドーである、ビル以外には、頼めやしないのも事実である。
 カードX101の依頼人は、悠々自適で現役を引退したアンドロイドである。
 人物的には温厚で、人命救助のプロであり、輝かしい実績を上げている。クーパー賞を7回受賞している。その仕事ぶりに好感が持てたことが、ビルがこの仕事を請けた大きな要因でもある。
 ミナもビルも直接会った訳ではないが、愛犬に私財を投じて惜しまない、その気持ちに報いたいとの思いが突き動かしていた。
 ミナの依頼料は決して安いものではなかった。それなのに、頼みもしないのにただでさえ高い契約額の何倍もの経費が毎月、時間外慰労費の名目で振り込まれてきた。
 異例のことである。
 依頼人はミナやビルが昼夜問わず、この件を追いかけている事を知っているらしい。
 そして、その危険度も。
 このカードX101の舞台の幕は第二ラウンドに突入した。
 第一ラウンド(カードA9)は、惨敗だった。
 何とか、一矢報いたいものだ。
 第二ラウンドの、その幕を上げるかのようにユリスから珍しくテレックスが入った。
 「ミナ。だいぶ仕事にも馴れたようだな、デスプが感心していたぞ。」
 ミナはユリスに誉められたことがうれしくて仕方がない。自分のやって来たことが間違いではないのか?いつも不安だったからだ。
 ユリスのお墨付きを貰った気がした。
 「みんなの力を借りて、どうにかこうにか、やってこられているわ。あたし、人脈には恵まれているの。いつもみんなに感謝しているわ。」
 ユリスはミナがまぶしく思えた。多少の犠牲は生じても、このまま真っ直ぐに歩んで欲しいと願った。しかしミナにどうしても伝えねばならないことがユリスにはあった。
 「ミナ、物は相談、いや、提案なんだが、デスプの調べではゾフィーがアンドロイド犬を追っている。危険な奴だ、この件を降りられないだろうか?」
 ユリスにとっても苦渋の選択であった。ミナは直ぐには話し出せなかった。ユリスの言わんとしていることがよく分かるからである。
 やっとのことで、重い口を開いた。
 「ユリスそれは出来ないわ。たとえ、あなたの頼みでも。今あたしが降りれば、仲間のビルが一人で追いかけることになってしまう。彼を止めることはあたしには出来ないし、誰にも出来ない。そして彼を見殺しにすることはあたしには出来ない。」
 ユリスは確認の意味で言ったまでで、ミナの意志を曲げる考えは無い。
 情や義理、縁者のコネが絡んだ仕事をしてはならない。これはプロの鉄則である。ユリスは、そんなイロハのイを持ち出すつもりは無かった。非情に生きているからこそだ。
 「別に俺はミナに頼み事をしているのではないんだ、気にしなくていい。だがゾフィーがロードスとクレイを動かした。マザー直属のスーパーエリート達だ。極秘任務のスペシャリストでもある。つまりは殺しのエリートだがね。彼らはとにかく手強いぞ、それでもやるのか?」
 ミナはユリスに言っている意味がぼんやりとしか理解出来て居なかったが、大変な事態に突入した事だけは分かった。しかし後戻り出来ないことに変わりは無かった。
 「ユリスご免なさい。あたしにはこの仕事しか無いし、依頼人が落胆するのを見たくないの。このカードはあたし一人のカードじゃないし、仲間在ってのあたしだから、結果に付いては、どう出ようとも、どんなに犠牲が払われようとみんな腹をくくっているの。わかって。」
 ユリスは意図的に深刻ぶらずに、話した。
 「ミナがやりたいようにすればいいさ。前にも言ったろ。ミナの邪魔をする奴はここには居ないって。今でも変わりは無い。ミナの覚悟を聞きたかっただけさ。彼らに対抗するには、今の力では相手にならない。もっと力を付けなくてはならない。急には無理だろうが、それしかないんだ。焦るなよ。」
 ミナはキョトンとした。一度もユリスの前で自分の力を見せたことが無いのにユリスには、自分の力をお見通しだったからである。おしゃべりデスプがユリスに告げ口したにしろ、その力量までは分からないはずである。ミナはかなり自信を持って言った。
 「ユリス、あたしずいぶん力を付けたのよ。ララも驚く位に。でもまだまだだって、デスプからもそう、言われた。忙しすぎて、サボっていたけれど、またトレーニング始めなきゃ。でもどうしてユリスにあたしの力が分かるの?」
 ユリスは事も無げに言った。
 「どうしてミナのことが俺に分からないと思うんだい?分からない方が不思議だと思うけれど。そんなことより、ミナは彼らと戦ったことが無いから分からないだろうから、言うが、彼らは、エスパー養成所、ラボチャイルドだ。文字通り戦う為だけに生まれて来た。その恐ろしさは想像を絶する。そしてロードスとクレイはそこのクラスのスーパーエリート戦士だ。ちなみにぼくらは、そこの落ちこぼれさ。ララ達には内緒だぞ。本当のことだから。」
 ミナは思わず笑ってしまった。ララとロンが落ちこぼれだったのか?と思うと何だかうれしくなった。
 「今、ミナがその落ちこぼれのぼくと戦うシミュレーションをしたとして、ミナが勝つ確立が何パーセントあると思う?」
 「わからない。」
 ミナには、本当に分からなかった。
 「そうだなーーーー、0パーセントかな。」
 0なら考えるまでもないだろ。
 「ゼロ・・・・」
 「ミナは戦い方を知らない。確かにある程度のパワーは身に付けた、しかし使い方を知らなければ戦えない。相手は闘い慣れていて、どのような汚い手でも平気で使ってくる。しかも二人だ。勝ち目は無い。」
 ミナは背筋が寒くなった。どう逆立ちしても勝てる相手では無さそうだ。
 「ユリスあたしには無理なの?あきらめるしかないの?」
 ミナが落ち込んで弱気になっていることに危惧をおぼえたユリスは、自分でも予期しないことを言った。