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ゴッド・モンスター・レクイエム(ミナとユリス)

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 ビルのエアーバイクは「ハロー、ビル。調子はどうだい。」と言って、自らエンジンに火を入れスタンバイした。
 「上々だ、ボーイ、待たせたな。」と言ってビルは背中までせり出してきたシートに深く身を沈め操縦スティックに手を置いた。
 「それじゃー行こうか。ボーイ。」
 デスプはそれを聞いて、エアーバイクを切り離し上昇した。エアーバイクはじょじょに下降していった。ビルは見上げてミナ達に手を振った。
 ビルはホテルのエアポートに着陸すると、すぐにロビーへと向かった。ミナはビルを救出しに行く前に別の者に頼んでホテルに予約を入れておいたので、ビルはスムーズにチェックインが出来た。
 ビルが居なくなるとミナはほっとして大きく深呼吸をした。
 さて家路に着こうとデスプに話しかけようとすると、先にデスプがこの時を待ってました、とばかりに先手を取った。
 「ミナ、大変お疲れの所すまんが、さっきは丁寧な自己紹介をしてくれて、感謝の極み。痛み入る。よくもあそこまで、人のことをコケにして好き勝手にウスラトンカチとかめちゃくちゃ言ってくれたな。ものには限度というものがあるんだぞ。限度が。いくら仏のデスプ様と言えども、我慢にも眼界がある。」
 ミナは日ごろ思っていることを素直に表現しただけでデスプが怒るとは考えもよらなかったが、話の流れの中とはいえ、「人でなし」まではほめ言葉でデスプもいい気分だったろうが、「ウスラトンカチ。」はマズイと心の中でつぶやいた。しかしどうせもう怒らせてしまったし、今更何を言っても手遅れだから、開き直ることにした。
 喧嘩をするいい口実が出来たし、いつもケチョンケチョンにやられて一度も勝ったことが無いので、『今度こそデスプを返り討ちにしてくれる。』と、ミナに闘志が湧いてきた。
 「あっ、あれはつまりそのー話の流れで言っただけで、勢いあまった。って言うか。本気じゃないし、言ってみたかっただけで、悪気はないのよ。あんたがいい奴だって事はあたしが一番よく知っているじゃない。あれは言葉のアヤってやつよ。分かるでしょ。愛情あまって憎さ1000倍ってやつ?でもなによ、デスプ、あの程度のことで怒るなんて大人気ないわよ。ケツの穴が小さい男ねーーー。もっとどっしり構えなさいよ。おとこでしょーー。」
 「なっ、なっ、なっ、なっ、なんだ?おれさまにはケツの穴はねーー。ふざけやがって、大穴が開いてるのはミナの方だろーー」
 「なっ、なっ、なっ、なっ、なんですってーーー、おおおアナとはなによーーーー、・あたしのはシマリだけはいいわよーー・・しっかり、ちゃっかりしてんだからーーー・・・・・」
 どういう意味の会話です?
 育ちも品も良い二人は帰り道、ゆっくり優雅にかたらいながら時間を掛けて帰った。
 そしてミナとデスプの会話は途切れる事無くよくはずんだ?
 日ごろのストレスが一気に発散した形となった。細かい話の内容については、十分かと思いますので省略させていただきます。今日も本当に仲のいい二人でした。




 ベン宇宙科学開発研究所の件は公表される事も無く、所轄内外のあらゆる機関が動かなかった。ミナにはそれが返って不気味であった。
 いずれにしろ、ビルに手が伸びる事は無いと踏んだ。あらゆる痕跡は消し去った自信がある。
 しかしこの件を追っている限り避けられない壁がある。マフィアや、やくざを相手にするのとは訳が違う。地球政府はおろか、マザーの中枢にすら深く関係している巨大企業の闇の部分である。
 彼らは網を張ってミナ達を消しにかかるはずである。仕事とはいえ、あまりにリスクが高い。
 ミナ以外の探偵は、まずこの仕事を受けたりしないだろう。
 その依頼、つまりビルのカードA9とは、五人の殺人に関する被害者家族からの依頼であった。犯人は巨大な組織で、シティポリスにシッポをつかまれるようなタマでは無い。
 しかし証拠さえつかめれれば、一矢報いることが出来る。
 危険度が最高レベルではあるが、報酬も表裏問わず賠償額の40%と破格であり、訴訟に至らずとも犯人の手がかりをつかむだけで相応の報酬が支払われる。
 その他に、着手金や経費も毎月振り込まれている為、簡単には降りたり諦めたりはできない。
 ミナはもちろんユリスには内緒でこのヤマを追いかけている。
 やばいのは百も承知の上である。ユリスはとっくに気付いているだろうがミナの仕事に一切の口出しをしない。言いたい事は山ほどあるだろうが、それを口にしたらミナの自主性を著しく阻害する結果となる。それだけは避けたいと考えていた。
 いかなる結果を生もうとも、自然の法則により放たれた矢を引き戻してはならない。
 ビルが持ち帰ったデータの分析から様々な事が浮かび上がってきた。アンドロイド犬は極秘で開発されている殺戮兵器の一つで、開発の開始は五年前にさかのぼる。
 そしてアンドロイド犬は脱走に成功したのだった・
 その脱走に伴い開発は中止されたが絶え間なく捜索は続けられていた。
 そして、今も逃走中である。
 アンドロイド犬は脱走して真っ直ぐに元の主人の屋敷に潜伏した。直ぐに主人に見つかるが主人は死んだ愛犬に瓜二つのアンドロイド犬を無条件で受け入れ、事情も聞かないまま、かくまった。しかし追っ手がせまり、主人に危害が及ぶことを危惧して、やむなくアンドロイド犬は屋敷から去った。そしてミナにアンドロイド犬の捜索依頼が舞い込んだ。
 犬の名をロッキーと言う。
 屋敷の主人は当局への届出をおこたり極秘任務として依頼を持ち込んで来たのだった。
 依頼人は、不法にアンドロイド犬を所持していた為、色々と聞かれるのが嫌でミナに会いたがらなかったのだ。主人は善良で犬の消息が心配でしかたがないだけで、どうしたいとは言っては来ない。
 秘密探偵のミナの噂を聞き、ミナならこの仕事を受けてくれるのではないかと、門を叩いたのであった。
 危険極まりない、殺戮兵器が今でも町の何処かで息を潜めている。その殺戮兵器がベン社製であると知られた場合、そんなスキャンダルは会社にとって大きなマイナスである。したがって、漏洩を恐れた会社は関係者の口封じを行なった。
 巧妙に事故に見せかけてはいるが、間違いなく関係者は、殺されている。
 当時のアンドロイド犬の開発チーム五人全員が死んだのだから。その関係性が無いと言う方が不自然である。
 彼ら以外でこの事を知りえるのは当時の開発部長と局長、本社では社長以外では関連部門の取締役数人だろう。
 しかし後ろで糸を引いているのが真の主犯である。そいつが口封じを提案して、実行に移した。
 それを突き止め白昼の元にさらすことが最終目標となる。
 殺された5人の内の1人目はビルから飛び降りた。
 二人目は乗っていたフライモービルが何らかのトラブルで墜落した。乗客全員が死亡した。
 三人目は持病の心臓疾患が悪化して突然死と言うことになっている。遺書もある為、病気を苦にした自殺とされた。
 バスルームで氷を浮かべたバスタブの中で発見されたからだ。
 彼の心臓では、1分ももたなかったであろう。
 四人目はホテルで小銭目当ての娼婦に毒殺されたことになっている。娼婦は未だ捕まっていない。