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ゴッド・モンスター・レクイエム(ミナとユリス)

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 全スタッフにアンドロイド犬の情報は共有データとしてインプットされていた為、別の事件を追っていたスタッフから、よく似たアンドロイド犬の居場所に関する情報がもたらされたのだった。
 その情報とは、シティーポリスの極秘情報からのもので、ある五件の連続殺人事件の容疑者がその犬ではないか?と言うものであった。
 その一報をミナはデスプと空の上で受けた。
 ミナの胸に付けているペンダントがひかり、ミナの前に三次元スクリーンを投影した。スタッフの一人であるビルからである。
 「ミナお疲れ、今俺はゾイドシティーにあるベン宇宙科学開発研究所に進入している。有名な軍事マシン研究所さ。俺のカード、A9を追っているうちに、ここに行き着いた。」
 「今、どこ?」
 「研究所内部に進入している。」
 「危険すぎるわ。」
 「もう、入っちまった。おかげで開発系のネットワークに潜り込めた。有力情報をゲットしたぞ。ターゲット411BがカードA9に深く関与している。ここから脱出できなかったことを考えて、このことだけはミナに伝えておこうと思って、危険をおかしてアクセスしている。これから脱出を開始する。」
 ミナは怒りたいところ我慢して聞いていたが、平然と言ってのけた。
 「ご苦労様、ビル、でも単独の深追いはルール違反よ。五分後に落ち合いましょう。今デスプが脱出ルートをシュミレートし終った所よ。これから誘導するからそのまま通信を切らずに指示に従って移動してちょうだい。あわてず、さわがず落ち着いてね。心配いらないから。必ずそこから出られるわ。」
 そう言うと、ミナは、研究所のどこに誰がいて、どこに行くかを知っているかのように指示を与えた。
 ビルは何者にも出くわすことなく、進んで行った。
 二分もすると非常サイレンが鳴り、侵入者の存在を確認したようだ。
 監視エリアに入ったのが原因だろうが、ミナにとっては想定内である。
 ビルがコンピュータに進入したことまでバレタかは定かではないが、すぐに追っ手が来ることだろう。
 「ビル、走って、後は真っ直ぐよ。」
 ビルは全速力で走った。長い通路のようだった。しかし行きつくと、行き止まりになっており頑丈な扉のように見えるが、人の力で開くような品物ではない。幅五メートル高さ四メートルはある鉄の扉で、取っ手も付いてはいない。
 上に開くのか横に開くのかも分からない。ビルが途方にくれているとミナの声がした。
 「一等賞で。ゴールよ。危ないから少し下がっていて。」
 ビルが恐る恐る2,3歩下がった瞬間、それを見ていたかのようにビルの鼻先をかすめて、扉が轟音と共に倒れてきた。
 大きく口を開けた先には、1台のスペースフライヤーらしき?ものが居た。
 デスプである。
 そしてデスプのコックピットから笑顔で手を振る勝利の女神、ミナがいた。
 コックピットは跳ね上がりアームが伸びてきてビルを捕まえるとコックピットに着座させ飛び立つまでの時間は二秒を切った。
 そして飛び去った。
 いや、飛び去ったのではなく、その場から消えた。
 ミナとデスプが現れて、ビルを救出して消えるのに要した時間は5秒の出来事である。
 ミナとデスプにとって5秒は、たいくつなぐらい、ゆっくりとした余裕のある一連の動作であったが、ビルには、いったい何が起ったのか、すら分からなかった。
 その三秒後には既にゾイドシティーはおろか、遥か彼方の見知らぬ空を飛んでいた。
 瞬間移動に慣れていないビルはしばらく放心状態が続いた。
 ミナはビルに捜査の手が及ばぬように、アリバイ工作の為、安全なホテルにチェックインさせるつもりでいた。
 ビルの使用していた。エアーバイクも当然回収済みである。
 ビルが意識を取り戻すと、チャップもあくびをしながら目覚めた。チャップの方が一日の長があり余裕もある。ミナはチャップをなでながら、ビルの苦労をねぎらうように話しかけた。
 「ビル、よくやってくれたわ。でも今後は事前に連絡してね、私達はチームでしょ。まあーいいわ。それよりビル、疲れたでしょ、仕事のことは忘れて、せっかくここまで来たのだから、しばらく休養をとるといいわ。ここならリゾート地だし安全に羽を伸ばせるわ。退屈なら誰かさんを呼んでも楽しく過ごせるわよ。」
 ビルは自分の状況も、ミナの心遣いも身にしみて分かっていたのでその言葉に甘えることにした。
 ビルは潜入した短い時間で可能な限りコピーした、マイクロメモリーをミナに手渡しながら微笑んだ。
 「ああー、そうするよ。今回のことはいい勉強になった。持つべきはいい相棒だってね。お前は最高だよ。一匹狼で粋がっていた俺だが、まったく鼻くそみたいにチッチャイって思いしらされたよ。」
 ミナは怒りもしないが、誉めたりもしない。しかしはっきりとした口調で言った。
 「ビル、あなたが小さいなんて、それは間違いよ。今回のことは別にほめられたことではないけれど、誰にでも簡単に出来る仕事じゃないわ。あたしがずっと追っていてあきらめかけたヤマだよ。ビル以外の誰かで成功出来たかどうかは分からない。自分の事をそんな風に思っちゃいけない。いつもの自信に溢れたビルがあたしは好きだよ。あたし達みんな仲間じゃない。あたしがもし困ったら、あなただって助けに来るでしょ。今回はたまたま、あたしがデスプと一緒にいたからデスプの力を借りて来ただけの事。今後の事はあたし達に任せてゆっくり休んでちょうだい。そして休み明けには元のビルに戻ってね、また一緒にバリバリ稼ごうよ。頼りにしているんだから。」
 ずいぶんと年下のミナにこれほどまでに励まされて気落ちしてはいられない。ビルにいつもの不敵な笑顔が戻ってきた。
 「そうだな、ミナの言うとおりだ、俺らしくもない。ミナ、デスプに礼を言わせてくれ。サンキュウ、デスプ。あんたは俺の命の恩人だ。本当に恩にきる。」そう言って、ビルは深ぶかと頭を下げた。
 ミナは対応に苦慮して、余計なことまで言ってしまった。
 「ビル、気にしなくていいのよ、デスプは気まぐれで、人で無しのウスラトンカチなんだから、人間なんてものは殺すものであって、人助けするなんて気持ちはこれっぽっちも無いのよ。たまたま通りすがりだし面白そうだから遊んでみたに過ぎないのよ。そういう奴なのよ、あたし以外の人間とは絶対口をきかないし、とにかく変わった奴なんだから、何考えているか分かったもんじゃないわ、ホント気にしないでいいのよ。」
 ミナにかかったらデスプの人格などあったものではない。めちゃくちゃな言い様である。
 ミナでなかったら、デスプは怒って空の下にほうり投げているところである。
 しかし実際にやっている事は当たらずとも遠からずだし、的を得ていると苦笑せざるを得ない。これといって否定したり、コメントする気にもなれないのでそのまま聞こえないふりをしていた。
 ホテルに近づくと空の上で、デスプがエアーバイクをコックピットの横にセットした。ビルはコックピットが開くとエアーバイクに移りまたがった、バイクはシート上の主を確認するとスクリーンパネルがドライブモードに切り替わり、表示されている全ての計器類が目覚めた。