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ゴッド・モンスター・レクイエム(ミナとユリス)

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 しばらくは罵声の飛ばし合いだったが一通り言い終えると、急におかしくなりミナが笑い出した。
 「ごめん、ごめん、ごめんなさい。確かに使ったわ。つかわなくったって勝てると思っていたのに、残念だわ。」
 デスプは正直に出られると、悪い気はしないので、花を贈った。
 「まーミナにしてはよく出来たと誉めてやるよ。なかなかのフライトだった。訓練しているようだが、順調のようだな。」
 ミナは得意げに言った。
 「先生がいいせいもあるけれど、あたしだってがんばったんだから。四か月でこれだけ出来れば上出来だって、ララに今日初めて誉められたの、いつもは怒鳴ってばかりの鬼コーチなのに。だからデスプにも見てもらおうと思って誘ったのよ。でも奥の手まで出させられるとは恐れ入りました。さすがデスプだわ。」
 デスプは冷静にレースのデータを分析し始めた。
 「ほーミナ瞬間移動まで習得したのか、この短期間で。」
 ミナは鼻高々で答えた。
「まーね。さっきは、パワーブースターの力をまだ借りたけれどね。なかなかやるでしょあたし。」
 デスプはどれほど高難度な技をミナが習得したか分かっていた。しかしここでミナを調子付かせてはララの指導方針の障害になると思い。
 「まだまだだな。この程度の出来では実践の戦闘じゃー使い物にならない。パワーブースターは訓練用の補助具に過ぎない。当てにしているようじゃ、そこ止まりだぞ。」
 きびしいコメントが帰ってきた。ミナもよく分かっているらしく。
 「そんなことデスプに言われ無くったって、知ってるわよ。今度会ったとき、腰をぬかしたって知らないから。」
 相当な負けん気の強さもミナには有るらしい。特にデスプには対決姿勢を隠さないミナであった。余計な道草をしたがやっとミナのアパートメントに到着した。フライトポートに着地してミナが降り立ち、さよならの挨拶をして歩き出した。
 「それじゃーまたね、デスプ。」
 その時ミナの背中にデスプが言った。
 「今日のフライトは最高だったぜ。本当だ。身震いしたほどだ。」
 ミナに自信を付けさせる事も忘れないデスプであった。
 ミナがあわてて振り向くと、デスプはもう飛び去った跡で跡形もなかった。
 「もー、あいつ。ほんとうに照れ屋さんなんだから。ああー、今日も疲れた。ぐっすり眠れそう。」
 そう言ってララの待つ部屋に向かった。
 ララはもう眠りについていた。ミナもベッドの中に潜り込んだ。まだミナは興奮気味ですぐには寝付けなかった。ミナはララに独り言を言った。
 「ねーララ。さっきデスプが言ってた。実践とトレーニングやゲームでは違うんだって。あたしのは実践では通用しないって。もしそうなら、ただのお遊びになっちゃうよ。あたしそうならないようにするには、どうすればいいか分からない。あたしこれ以上ユリスのお荷物になりたくない。ユリスはいつもあたしの心配ばかりしている。あたし痛いほどそれが分かるの。もしあたしが強くなればユリスの心配事が少しだけ減るでしょ。その為には付け焼刃やお飾りの力じゃ駄目なの。これからは常に実践を想定してララのトレーニングをしなきゃって思った。アウトライナーの事件であの時は誘導弾を回避する術はなかった。でも今なら、二十以上の対処法でどんな条件下でも反射的にそのケースに一番有効なものを選んで実行できる。デスプの言っている実践って、そう言う事なんだってあの事件が教えてくれている。あたしには分からないことだらけで、本当は不安でいっぱいなの。でもそれを乗り越えなきゃユリスの笑顔を見ることが出来ない。ねーララ、あたしユリスに約束したの、あんたの生きる意味はあたしが探してやるって。お笑いよね。こんなあたしが。ユリスはそんなこと全然期待してないし、もう忘れてしまっているだろうけれど、あたしは忘れない。馬鹿よね。ユリスはあんなに強いのに。弱虫のあたしがなに向きになっているのかしら。でもララ、それはあたしが必死になって探しているものであるからだと思う。ユリスを見ているとあたし自身を見ている錯覚に陥ることがあるの。ぜんぜん性格逆なのにね。変でしょ。あっごめん、あたし変なことしゃべっちゃった?もし聞いていたら忘れてね。ユリスにも内緒にしてね。ユリスにまた笑われちゃうわ。アアー疲れた、もうヘトヘト、眠いわ。おやすみなさい、ララ。いつもありがとう・・」
 ミナの寝息がすぐに聞こえてきた。ララは体をミナの方へ寝返って、ミナのやすらかな寝顔を見た。ララにとっては数百年生きて来て唯一と言っていい至福の時であると感じている。
 ララはミナのことを知っているつもりでいたが、それはとんだ思い上がりだったと痛感した。それもうれしい方に間違えていた。この子は確かに選ばれるべき子だ。だがマザー達もほっておいてはくれないだろう。全精力を注ぎ込んで最終段階に登りつめるしか活路は無い。いかなる犠牲を払ってでも。
 ララは決意を新たにした。
 ミナが目覚めるとララはすでにベッドには居なかった。キッチンでコーヒーを飲みながら、端末機と交信をしている。かなり大量のデータのやり取りをしているのが三次元モニター画面の動きで分かる。
 データの洪水がララによって処理されているのが確認できるのだが、ミナにはただコーヒーを飲みながら端末機を見ているだけのようにしか見えない。
 いったいどのようにしてララは受け取ったデータを処理分析して情報をインプットしているのだろう?と思って不思議そうに見ていた。
 しかも情報のやり取りをしながらでも、ミナが無駄話しをして来ても、嫌がりもせずに、何でも答えてくれるのだ。
 その間も処理速度が落ちることはなかった。ララは席を立ってミナにモーニングキスをしている時でさえも休まず仕事をしている。
 「おはようララ。昨日はヘトヘトでうちに帰ってきた所までしか思い出せないの。あたしなにか寝言とか言ってなかった?」
 ミナにレモネードを注ぎながらララは意地悪そうな視線を送って話した。
「そういえば、なんか言っていたわ。よく聞き取れなかったけど、いやーんユリス、とか、そんなとこ触っちゃ駄目。ちがうの、もっとーー。とか、そんなこともするの?とか、あんなこともするの?とか、はずかしくてこれ以上はわたしの口からは言えないわ。昨夜は大変だったわね。」と冗談のつもりで言ったのだが。ミナには思い当たるふしがあるらしく真に受けてしまい。真っ赤な顔をしてゆでだこのようになり無言で下を向いてしまった。
 ミナはララの大爆笑でやっとのことで顔を上げた。
 「ごめん。冗談よ、ジョウーーダン。いびきがうるさくって、鼻をつまんだだけよ。」と言ったら、またしても下を向いてしまった。ララはこれもまた失敗した、と思い。「ほんとうにごめんなさい、いびきなんてかいてなかったし、何も言ってなかったわよ。笑ったり、怒ったり、七面相はしていたけれど、それがあんまり可愛いかったから、朝まで、あなたの寝顔を見ていたわ。それだけよ。いいでしょ。別に見たからって減るもんじゃ無いし、もしかしてあなたわたしから、見物料、取るつもりじゃないでしょうね。」
 今度はミナが爆笑した。