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ゴッド・モンスター・レクイエム(ミナとユリス)

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 もう一人は女性でミナが理想とするような体形の持ち主だった。非の付け所が無いとは彼女のことである。体のラインがそのまま出る服に惜しげもなく露出した素肌がまぶしくてミナはつい視線をそらしてしまった。
 しかし彼女は人をくったような不敵な表情で、まっすぐミナをみつめた。
 女性特有の媚びた所がまったく無く、それでいて、冷たい印象がまるでない。
 それどころか暖かで、清々しくミナには感じた。そしてこの二人もユリスと同じ匂いがした。そのユリスは相変わらずのやさしい笑顔でミナを向かえた。
 「ミナ大変な目に会ったらしいね。デスプから概略は知らされているが、細かいことは後で。それより二人を紹介しよう。早く紹介しろと後ろからプレッシャーをかけてくるもんでね。ララとロンだ。二人とは古い腐れ縁でね。今では兄弟のようなもんさ。」
 ララが先に握手を求めてきた。近くで見ると更にその美しさが際立ち、女性のミナでさえ見とれるほどである。ロンはクールで怖そうだったが握手をした瞬間、なにかがミナの中に流れ込んできて、暗雲が吹き飛ばされ、青い空が広がるような気持ちになっていた。
 ララが長年の親友でもあるかのような口振りで話し始めた。
 「自殺願望でリストカット常習者。それでもって、引きこもり児童のユリスをよく更生し、立ち直らせてくれたわ。みんな感謝しているの。皆の頭痛の種だったのよねーー。私からもお礼を言うわ。ありがとう」
 ララは、ミナの不安を一瞬で見抜いた。
 「あら?そうなのミナ。いやだーー、心配しないでね、ミナ。私はユリスみたいなお子様には興味ないから。ユリスは昔からモテルタイプじゃなかったから、女の子の友達さえいなかったわ。ネクラでじめじめしていて、よくいるでしょ。ほら、オタクって言うの?ユリスはあなただけの物よ。煮て食うなり、焼いて喰うなり、ご自由に。でも、もしユリスが浮気したら教えて頂戴、たっぷりお仕置きしてあげるから。まっ、ありえないけどーー。きっとまだ、童貞よ。ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、・・ダッサーーーイ・・ッ、ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、・・」
 それを聞いていたロンがすかさずユリスの加勢に入った。
 「オーこわ、ララ、そりゃ言い過ぎだぞ。これでユリスがまた引きこもっちまったらミナが悲しむぞ。ララは手加減と言うものを知らないからなーーー。ユリス、心配するな、俺の辞書じゃ、10人までは、童貞の内だからな。ハッ?・・お前、たしか0人だっけ、お気の毒に・ガッハッ、ハッ、ハッ、ハッ、・・・・・・」
 ユリスの助っ人に入ったんじゃないんですか?ロン?
 黙って聞いていたが、人をオモチャにしてからかっている二人にユリスは釘を刺した。
 「それぐらいにしといてくれ。ミナとは初対面なんだし、お前ら自分のキャラが濃いのを忘れているぞ。」
 「・・・・・キャラが濃い?・・・・・」
 「・・・・やるじゃない、ユリスぼうや」
 ユリスは、ミナを家の中へと案内した。
 ララとロンはユリスとミナとは逆に笑いながらデスプに会いにそのまま桟橋の先端の方に歩いて行った。
 ユリスはデッキへと続く全開放の窓辺に立ち外を見ていた。
 ミナに「好きにくつろいでくれ。」と言った。
 ミナは外のデッキに出てそばにある椅子には座らずにデッキの端に直接座り脚を投げ出した。高所恐怖症の者なら気絶しかねないあやぶさだが、ミナにとってはこれ以上ない気持ちよい風と絶景が広がっていた。
 ここは、85メートルの上空なのだ。
 ユリスは椅子を持ってミナの隣に行き腰掛けた。
 「ミナごめんよ、君を危険な目に合わせた。事前に何が起こるか分かっていたが、ミナの仕事の邪魔はしたくなかった。デスプがついていればお前に傷一つ付けはしないだろうと思い、ガードさせた。」
 ミナは少ししんみりした口調で言った
 「ユリスが謝ることじゃないわ。依頼主をろくに調べないで、おいしい仕事だと思って安請け負いしたあたしに責任があるんだから。もう少し慎重にならなきゃね。こんなんじゃ、ユリス達に迷惑ばかりかけてしまうわ。」
 ユリスは予想通りのミナの言葉に危惧を隠さずに話し始めた。
 「ミナ、一つ尋ねる。今回のことは問題にならないほど些細なことだった。しかし我々の真の敵はもっと巨大で狡猾だ。君を利用することを考えるかも知れない。ララとロンを君に合わせたのは、君を協力して守るためと、もう後戻りが出来ないからだ。それではあらためてミナに問う。もし、何者かに捕まって、我々の情報や居場所。もしくは、おびき出せと脅迫されたとする。ミナならどうする?」
 ミナは答えるまでも無いと言わんばかりに、「死んでも言うもんか、当たり前だろ、仲間を売るなんてあたしには出来ない。」
 これまた予想どおりの答えにユリスはさとすような口調で続けた。
 「ミナ、君の命は彼らにとって、1グラムの重みも無い。君が生き残る為には、全ての情報を提供する事だけだ。いいかい良く聞くんだ。我々はミナのあらゆる情報を入手できる。捕らわれの身になったとしてもだ。しかし君が殺されてしまえば救出するチャンスもあらゆる希望も消えてしまう。いいか、どんな手を使ってでも生き残るんだ、我々の誰かが犠牲になる。などと考えてはいけない。自分の命をどうすれば守れるのか?だけを考えろ。そして我々の力を信じるんだ。かならず救い出す。それが出来ないようなら始めから仲間に入れたりはしない」
 ユリスは嘘をついていた。自信なんてどこにも無い。ましてガイヤからミナを守るなんて至難の技だと知っていた。しかしミナだけは守らなくてはならない。それは皆の共通の考えであった。その考えが何処から導き出されているのか誰も知らない。DNAのもっと奥底に刻み込まれている物らしい。ミナはユリスに何といわれようと、それでも力なくいってのけた。
 「ユリスごめん。ユリスの言っている事は良く分かるし、あたしだって馬鹿は馬鹿なりに、どれほどユリス達の足手まといになるか考えた。でもあんたに付いて行きたいと決めた時、同時に決めた事がある。もし何かの事件にまきこまれてユリス達に危険が及ぶようなら、死のうって。だから、さっきだってちっとも怖くなかったよ。もうユリス達に合えないのかなーって思っただけ」
 ユリスには言葉が無かった。ミナに全てを見透かされている思いであった。ミナは知っていた。ミナが喋ろうが喋るまいが彼らは生かしては置かないことを。
 「ねーユリス、覚えてる?あんたにひどい事言ったね。もちろん本気で言ったんじゃないけれど。あんたが死んだって、誰も悲しんでくれないんだろって。ララとロンそしてデスプもDJもあんたの事、本当に心配しているし、信頼している。焼けちゃうぐらいにね。あたしだって気持ちだけは誰にも負けない自信があるの。でも皆にはかなわない。あたしも力が欲しい。あなたを守れるだけの」
 ユリスは驚いた。ミナを分かっている気になっていたが、大きな間違いであった。ミナはユリスの考えの枠を超えて存在していた。