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あたしとリツコの徒然草

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たとえあなたを犠牲にしても



誰かの為に生きるなんて究極のエゴイズムだ。
だって知らない間に他人の命を預けられた方はたまらない。

それでもあたしは自分以外の為にしか生きられない。
だから今はとりあえず親の為に生きている。

親が死ねばどう転ぶかはわからない。
親が死んでもそのとき養育の必要な子どもがいればとりあえず生きるのだろうな、と思うくらいのものである。



実際、他人の為に生きるのはエゴイズムなのだけれど、自分自身の為に生きるというのは想像できない。

だってそもそも生きるということ自体があたしにとっては苦役に他ならないし、世界中に一人もあたしの為に泣いてくれる人がいないならば生きていること自体に意味がないと思う。


だけどあたしは、例えば全く知らない人が「自分は自分自身の為に生きてきましたが、これから自分自身の為に死のうと思います」と宣言したら、きっと物凄く必死になって止めるだろうな。

それで例えばその人が「それじゃあこれからは貴女の為に生きようと思います」と言ったら、「それでも良いから生きてください」と言うだろうな。


何だか色々と矛盾しているけれど、分かったことが一つだけある。

あたしは多分、究極の中の究極のエゴイストだ。
自分はしょうもない死にたがりで自分の為に生きることもできない弱い人間のクセに、他人が死ぬことはどうしても許容できない。





「あたしより先に死なないで。それから、あたしのお葬式で泣いてね」
と言うと、リツコは驚いたように目を見開いた。

「酷いこと言うね」
彼女は少しだけ苦笑する。

あたしの喉の奥は引きつって鼻の奥はツンとした。



リツコは優しい。
残酷で誰にも優しくなれないあたしは、その優しさにつけ込んでようやっと呼吸している。
作品名:あたしとリツコの徒然草 作家名:ハル