看護師の不思議な体験談 其の十七 『春のホタル』
今日の夜勤は新人Yさんとだった。
「Yさん、今のうちに少し休憩しようか。」
消灯を済ませ、病棟内が静かになる。もう一人のスタッフをナースステーションに残し、Yさんと先に小休憩に入った。
「杉川さん、あの…」
「うん、何?」
おやつの袋を豪快に開けながら返事をする。
「Kさんは、どうなっちゃうんでしょうか…。」
「…そうだねぇ…。」
「このままずっと病院で暮らしていくんでしょうか…。」
「…それはないよ。分かる範囲で連絡を取り続けて、引き取り手がいない場合は、警察に電話。」
「警察…ですか?」
「そう。長男夫婦を探してもらって、あとは警察まかせ。」
「なんだか…。また同じことされそうですね。Kさん。」
「私たちに医療者にできることは、限られてるし…。あとは市や区の仕事になってくるから…。でも、せめて長男夫婦と話がしたいよね。」
休憩室がため息でいっぱいになった。
作品名:看護師の不思議な体験談 其の十七 『春のホタル』 作家名:柊 恵二