オーロラのたなびく地で。
「…もぉダメぇ…死ぬぅ~」
「ほらほら、まだ30分も経ってないじゃない、遭難したくないんだったらさっさと動きなさい!」
「あ~!もぉヤダぁ…」
交通費とかをどうにか節約したい私とレニィは、ヒッチハイクがてら近くを通りがかったトラックの人にお願いしてもらった。
揺られること1時間…
誰の手にも荒らされていない、一面の白い世界が広がっていた。
「嬢ちゃんたち、スキー場行くんだったらまだ先だぞ?本当にここでいいのかい?」
初老の人の良さそうな運転手のおじさんは、怪訝そうな顔で私に答えた。
「ええ、ここでいいんです、それにスキーするのが目的じゃないし」
「へ?スキーじゃない?」呆然とするおじさんだった。
慣れないスキーを履いて、30分後…
「さぁどうする、やめて帰る?」雪の中に大の字に倒れている私に、レニィが檄を飛ばした。
「…やだ」顔面を雪にうずめたまま、私は話した。
「じゃあ立って進まなくちゃ、ここら辺は全然人気がないし、家も無いんだからね、遭難したら一発でアウトだよ」
「はぁ…」
私の脳内プランだとスムーズに事を運べたんだが…雪の世界は厳しかった。
何より思うように足が進まないし、普通に歩くより体力めっちゃ使う。
─こんな無謀なこと、どうして思いついちゃったんだろう─
少し悔しくて、少し情けなくて。
仰向けにごろんと転がり、胸ポケットからあの写真を取り出す。
「…………」
「どうしたの、行くの?行かないの?」レニィの口調が少しいらつく。
─そうだ、私のパパとママだって行けたんだもん、私に行けないはずが無い!─
私は重い体を強引に持ち上げ、両手で顔をパンパンと叩いて喝を入れた。
「ごめん、もう泣き言言わないから許して」
レニィの目も真剣に変わる。
「よーし、どんどん行くわよ!」
そう、ここで引き返したら…私は両親の心を裏切ってしまうことになる。
作品名:オーロラのたなびく地で。 作家名:taka-taka