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オーロラのたなびく地で。

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「あぁこれね、お前が生まれてすぐのときに撮った写真だよ」
居間でお茶を注ぎながら、祖母が答えてくれた。
もう80超えたっていうのに、未だ足腰はピンピンしているし、病気一つしたことが無い。
とにかく若い、だから私は…安心してここを出られるんだ。

「でも何でまたこんな雪の中で?」私は祖母に尋ねてみた。
「お前にオーロラを見せたかったって言ってたね…確か」
写真を見つめていた祖母の瞳が遠くなる。
「オーロラ?」初めて聞く言葉だ。
「この村よりずぅっと先にね…十数年に一回、それが見られる場所があるのさ」
祖母はふと、窓を見つめた。
うっすらと雪が積もっている、もうすぐ本格的な冬だ。
「だから、オーロラって何なのよおばあちゃん」遠まわしな答えにちょっと腹が立った。
「……」祖母はそのまま、窓をじっと見つめていた。
「おばあちゃん…」

「とっても寒い日の夜にね…空と風が七色のカーテンに変わるんだよ」

「七色の…カーテン??」
改めて写真を見てみる。
そう…背景にうすぼんやりと何かが見える。
まるで、柔らかなシーツを思い切り空に広げたかのような感じの光の波が。
だけども、この色あせた写真じゃ七色までは分らない。

「どうしたの?じっと魅入っちゃって?」祖母が私にそっと話し掛けた。
「あ…え、いや、ちょっと気になっちゃって…オーロラっていうのが」
少しぬるくなってしまった紅茶を飲み干す。



「七色のカーテン…オーロラ…かぁ」
ふぅとため息をつくと、紅茶の白い吐息が部屋にぽっと浮かんだ。