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オーロラのたなびく地で。

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「ふう…あとはこの荷物だけか」
荷造りはほぼ整った、あとはこの、思い出の詰まったタンスだけ。
でも、思い出はすべてここに残そう、また戻る時があると困るから。
そう、私はこの生まれ育った町を出よう、って決めたんだから。

だけど…
ふと何か思いにかられ、タンスを開けてみた。
ギキィ…油の切れた重い音。
懐かしい匂いと共に、小さな頃の私の服や、ぬいぐるみが迎えてくれた。
みんな…私をさびしがらせない為に、祖母が買ってくれたものだ。


私は両親の顔を知らない。
私が1歳半のときに、車の事故で亡くなったって聞いただけ。
それ以来、祖母が私の親。
別に「両親なんて私には最初っからいなかった」って考えちゃえばそれで済む。
そんな思い出、私には無いから。

だけど…何か、心の隅っこが物足りない。
寂しい気持ちじゃなく、かと言って両親のいる他人の家庭がうらやましい訳でもなく。

だから、私は都会へ出ようって決めた。
こんな物足りない思いのある寂れた村じゃなくて、もっと人を探しに。
どっかで仕事見つけて、自活して、いい家買って…

「でもなぁ…お前だけは特別に連れて行ってやるか」
私は、タンスの隅で寂しそうに私を見つめているクマのぬいぐるみを手にとった。
一番最初に祖母が買ってくれた一番のお気に入り。
そして、ふと手にとった時…何かがぱらりと床に落ちた。

「?」

紙切れ?いや違う。
それは色あせた一枚の写真だった。
ぬいぐるみを抱きしめ、その写真を見てみた。

雪の中、私に似た感じの人が二人。
その一方は、赤ちゃんを抱いていた。
「…誰だろう?」