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むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編5

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 「別に、そんなに難しいことでもない。私達を呼べばいいわけで、私達を排除して影で事を決める……」
 「その件に関してはボクも悪かったと……」
 市原が場の空気が読めないのかしゃしゃり出てくるのを大井弘子は左手を上げて制した。
 ――おまえは黙ってろ。おまえの相手はあとでしてやる。
 「連絡の不徹底……ではありませんね。何か意図があったからそういうことをしたのでしょう。それはいったいなんですか。私達に対する嫌がらせ……だけではないでしょう。16CC上層部に対するあてつけですか? 親会社に対するデモンストレーション? それてもブランに対する意趣返し? いずれにしたところで、あなたのやっていることは、会社に対して損害を与えるということであって、それは背任ですよ。あなた、もしも何かあったとき、責任をとる覚悟はおありなのですか?」
 「……」
 芝崎はぽかんとしている。背任という重い言葉があるいは芝崎の狂熱を拭い去ったか。
 ――責任を取れるのか。仲間と画策したことで生じた損金なりを自分で負えるのか。
 新しい環境に対する不満。権利をさらっていった会社への不平。上司に対する鬱屈。野望。そういうものが、芝崎をサボタージュに走らせた……のか。あるいは、そこまで考えもなく、ただ、幼稚園児のように駄々をこねていただけなのか。いずれにせよ社会は動機を勘案するよりも結果を重視する。理由はともあれ損害は損害。そのことに……芝崎は突然思い至ったのか。大井弘子の脅しに芝崎は別のベクトルで狂ったようである。
 「はいはい! 分かりましたよ! 謝るよ、謝りゃいいんだろうがッ! 謝りますよッ!」
 ヤケクソの暴発。けれどその心の奥には不安と恐怖が入り乱れているのに違いない。そして大井弘子は軽く頭を下げた。
 「そういうことであれば私達も謝罪いたしましょう。本来的に事実に対して謝罪をすることはないと思うのですが、頭を下げていただいているのであれば私達も頭を下げるのが礼儀ですから」
 ――頭下げるって……芝崎の態度、謝っているとはとても思えんけどなー。
 不遜というか、壊れた芝崎の姿を見ながら小娘は思う。だが、姉がそうするならばそれでいいのだろう。
 それに、まだ話は終わったわけではないのだ。