むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編5
「さて……そちらのお話は終わったようで、私のほうからも実は、お尋ねしたい儀があるのです」
「それは……なんでしょう」
市原はぼんやりしていった。
「16CCという会社のことです。二期連続赤字なのですね」
大井弘子はすぱっと言った。
「それで……16CCの親会社であるNRTは三期連続で赤字だと子会社の支援を打ち切るとか。それは本当ですか?」
何故それを知っているのか。
市原は少し戸惑っているようである。
「伝え聞くところによると、こちらの会社は今中間期もあまり成績が良くないということなのですが……それは芝崎さんはご存知なのですか?」
三年連続で赤字であれば会社はなくなる。16CCはすでに二年連続の大赤字。そして今年度前期も赤字。後半期に盛り返して黒字に持っていかないと会社はなくなる可能性がある。大井一矢の言いたいことは、
――そんな状況を理解していながら足の引っ張り合いをしているのか?
ということ。そして芝崎はいつものようにトンチンカンであった。
「……知ってますよ。そんなこと」
丸山花世としては点を仰ぎたくなるところである。
――知ってて、そんな馬鹿なことをしてたのか!
「いや、しかしですね……ゲームのタイトルはこれから発売になるわけでして、検収がずれているだけなんですよ。下半期でなんとかすれば、あるいは……」
市原は言い訳のようにして言った。
本来的にはそれは外注には関係のないこと。金さえもらえればそれでいいだろう。市原はそう言いたい違いない。だが大井弘子の気持は妹にはよく分かっている。
――作りました、売れませんでした、会社はまたつぶれましたでは……エターという作品は気の毒ではないか。
「そんなことできるのですか?」
大井弘子は訊ねた。姉はすでに知っているのだ。
――その作品は売れない。
と。どれだけ数を撃っても、当たらない。何も当たらないのだ。最大で五千本。最少で……おそらく千本。16CCが出すタイトルでお客を惹きつけるものは皆無。
「とにかく今は頑張るしかないかと……。それに」
「それに?」
「ゲーム部門を始めたのは去年のことで、ですから、親会社も、その辺りは考慮するのではないかと……」
「……」
作品名:むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編5 作家名:黄支亮