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むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編5

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 ――一度は潰れ掛けたエターナル・ラブをを復活させるのは誰だ? それはオレ! 芝崎次郎!
  芝崎はそう信じている。そう振舞いたい。だからホワイトボードの前で狂ったように踊る。芝崎にとっては、自分以上に目立つ人間が許せない。越田や間ならばまだ許せる。一応は同僚だし、芝崎には絵が描けないのだから。だが、外注にスポットライトが当たるのは許しがたい。
 ――オレが主役! オレが主役なんだ!
 だが主役も何も芝崎には何の才能もないのだ。
 そして、一方で、救世主という言葉は……。
 丸山花世は姉のほうを見やった。姉も……妹のほうに一度だけ視線を送ってくる。
 ――その通りである。
 つまり、興奮した芝崎の口から発せられた言葉は、多分だが作品そのものの言葉。作品の神様は常に作り手にいろいろな情報を送っている。それは、些細な白昼夢だったり、雑踏で聞こえた誰かのため息であったりとさまざま。大事なのはそれに気がつくこと。
 ――作品を救えるのは貴女たちだけです。
 作品の神様は多分そういうことを言っている。だから、芝崎の口から発せられた言葉がひどく輝いて聞こえた。小娘はそう捉えている。そして、それは大井弘子も同じ。芝崎とその場に居合わせた市原はだが、その大事なサインに気がついていないのだ。
 「謝罪……謝罪しろッ!」
 芝崎はまだ吼えている。大井弘子は憤りを瞳から消して言った。
 「分かりました。謝罪いたしましょう。ですが、それは、謝罪をするのであれば、まず、あなたからでしょう」
 「……」
 「名前の変更。それは、私達の専権事項です。あなたが勝手に変えていいものではありません。侮辱と仰られるが、最初に手を上げてきたのはあなたです。あなたが最初に恣意的な行動を取ってきたわけで、ですから、私は申し上げたのです。『そんなことでは会社はつぶれますよ』と。何度でもつぶれる。そのことは事実です。先に礼を失していたのたのはあなたで、ですから私も無礼で応えた。自分のことは棚に上げて他人に謝罪を要求するなど言語道断」
 「……」
 「名前の変更に関しては、私達を会議に迎えるべきでしたし、それが当然です。でもそうしない。それはいったい何故ですか?」
 大井弘子は冷静に聞いた。芝崎は答えない。