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むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編5

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 「市原も芝崎も私が今話したことの意味を半分も理解できないでしょう。そして、死ぬまで理解できない。それこそが結局、本当に作品と向き合っている人間とそうでない人間の差なのでしょうね」
 「……」
 「エターという作品は……生きたいと思ったのでしょう。だから、最後の最後、あなたが書いたシナリオを伝わって、あなたの水晶に逃げ込んできた。まさに間一髪……といったところですか」
 三神の解説はとても愉快なものであった。
 「もう本家のエターには……魂はないです。魂がないですから、朽ちていくばかりです。でも、それでいいのです。作品の魂は回収されましたし。それがあればエターはいくらでも再建できる。希望は、未来につながったのです。大岡越前は……いるんですよ、きっと」
 三神は穏やかに笑った。そして、小娘は慰めに少しだけ希望を取り戻した。
 「そっか……そういう考え方もあんのか……」
 「いや。そういう考え方しかないのです」
 三神は楽しげであり、そして、丸山花世も頷いた。再建可能であれば、また最初からやればいいだけのこと。
 「丸山さん。行きましょう。見せたいものがあるのです」
 変わったプロデューサーそう誘った。
 「ともちかの原画、もうあがってきています。とてもいいものばかりです。それをごらんに入れます」
 「え、もう、できてんの?」
 「妙に気合が入ってるんですよ。魂が戻ってきたからでしょう。きっとタイニーはいい作品になりますよ」
 三神は披露した小娘を励ました。けだし……人は一人で生きているのではない。いつも誰かに支えられているのだ。支えているのは人だけではない。目に見えないもの。小さな神様でこの世はあふれている。そして、丸山花世は、そういう小さな意思にかなりアピールする性質であるらしい……。
 「行きましょう」
 三神は言い、小娘は頷いた。
 「ああ、うん。分かった」
 「次の作品も、製作しましょう。もう決めてるんですよ」
 三神は楽しげであった。小娘も吹っ切れたように歩き始める。
 「ちょっと気が早えんじゃねーの?」
 
 一方……。
 丸山花世も大井弘子もそれは知らないこと。
 恵比寿にある16CCは、暗闇に包まれていた。
 まさに暗雲。五里霧中。真夜中の暗さ、と言うべきか――。
 「……」