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むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編5

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 「え、あ、う、うん……」
 いつも身につけているのに……いや、身につけているからこそ、その内部を伺わない。肌身離さず持っているフンコロガシのペンダント。小娘は慌ててそれを取り出して空にかざす。
 「あっ!」
 丸山花世は思わず叫んだ。
 まったく気がつかなかったことであるが……水晶には薄い水色の光点が宿っている!
 「あ、光ってる……昔、こんなのなかったのに……いや、でも、どうなんだ? ええ?」
 丸山花世はうろたえている。そういう表情も物書きヤクザには珍しいこと。
 「昔はこんな光の点、なかったのに……ああ、いや、気がつかなかっただけか?」
 「どれ……ああ、うん」
 三神は丸山花世の水晶を覗き込んで、それから穏やかに笑った。
 「ああ、それです。綺麗な青い光点ですね。いかもエターの魂らしい、清楚で健気な魂です」
 「え、これ、これそうなの?」
 「はい」
 三神は……嘘をついたのだろうか。傷心の小娘を勇気付けるために。もともとそのような水晶内のクラックは存在していたのではないか。そうでなければ、何かの拍子に傷が生まれて、それが乱反射で輝いているだけと説明できなくもない。むしろ、そう考えるのが自然。だが。WCAの会員はそういう合理的な考え方はしないのだ。
 ――それは間違いなく作品の魂です。
 条理ではなく情念。理屈ではなくて感情。感情と主観が優先される。
 「……エターという作品は、もう、市原たちを見捨てたのでしょう。もう、彼らの元には幸せはない。彼らは……作り手としての使命を終わらせたのです」
 三神は言った。
 「あなたは……言ってみれば、作品の魂の元に送られてきた最終便だったんですよ。これを逃せば作品の魂は永遠に回収されずに消えていく。あなたがたが大きな精神的な消耗に耐えながら、それでも作品を書き続けたのは、きっとそういうことなのです。とても意味のあること。作品の魂を連中の手からもぎ取ってくる……芝崎たちがお二人に攻撃的で非協力的だったのは、あの男も無意識に、あなた達の存在理由を察していたからかもしれませんね。あなた達は自分達から全ての幸福、存在理由を奪っていく存在だと」
 自分の栄光を、思い出を根こそぎ奪っていく。
 丸山花世は……大井弘子もそうだが借金取りのようなもの。