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むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編5

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 「でも……大井さんの気持はなんとなく分かりますよ。作品を作るのは楽しいばっかりじゃない。そういことをあなたに教えることができれば……それはきっと意義深いことでしょう。経験というものは何よりも大事ですし。だからあえて火中の栗を拾ったのでしょう」
 小娘は憂鬱な顔をした。エターナルラブという作品のこと。作品の前途を思っているのだ。
 「16CCって会社がどうなるかも分からないしさ」
 「そうですね」
 16CC、経営的に危険。
 そのことはすでに大井弘子は三神にも伝えている。
 「エターって作品、どうなっちゃうのかな。芝崎たちが苦しむのはむしろいい気味だけど、作品がみんなに笑われるような状況になるのはなあ……」
 丸山花世は言った。
 「……作品、いったい、どうなっちゃうんだろうか」
 小娘は口をつぐみ、そこで三神は応じた。
 「……向こうのエターがどうなるかは分かりませんが、私はそういう時に、こうすると思います」
 「?」
 「WCAから送られてきた水晶。あれを見ますね」
 「は?」
 小娘は怪訝な顔をしている。
 「あの水晶は……作り手が大きくなるたびに輝きを変えていくのです。それは、作品の神様がそこに触れて、場合によってはその中に逃げ込んでくるからだと言われています」
 「神様が……水晶球に逃げ込んでくる?」
 それは不可思議極まる話。
 物理的にはありえない与太話。けれど、三神は信じているのだ。そういうことがあると。
 「作品はいつか死にます。では、作品の魂はどこに行くのか。多くの場合は人の心に戻っていきます。人の心から生みざたれたものは人の心に還るのです。ですが……」
 「ですが?」
 「まだもう少し、活躍したいと作品が思うのであれば、作品の魂は人の心に戻ることを拒否します。そして、信頼のできる作り手の傍らにあろうとするのです。WCAの水晶球はそのためのものなのです。そのための言ってみれば仮の宿。たくさんの作品に頼られる作り手が持つ水晶球はですから、輝きを変えていくのです。多くの魂が宿っていますからね」
 「でも、そんなこと、あんのかな……そんな馬鹿なこと……」
 小娘は震えている。そういうことがあると分かっているのに震えているのだ。
 「自分の水晶球、確認されてはいかがですか」