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むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編5

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 相手のことを思えば文書に残しておくほうがいい。それは自分のためでもある。だが市原はそうしない。理由は……丸山花世には分からない。形として自分の馬鹿さ加減が残ることが耐えられなれないのか。それとも……何かトラブルが起こることを市原も予期していて、その際に、大井姉妹を道連れにしてやろうと画策しているのか。
 ――オレだけでは死なない。まわりも道連れだ!
 だとすれば随分と業の深い男である。
 「それで、どうしました? 確約書……どうあっても、送ってこないのでしょう?」
 「ううん。大丈夫。ちゃんと手は打ったから」
 小娘は言った。
 「アネキさ、市原が不誠実なのもう分かってたからさ、だから、こっちで書面用意して、向こうに送ってやったんだ。そっちでサインして、はんこ押して戻してくれって」
 「でも、市原のことですから、言を左右にしてサインをしなかったのではないですか?」
 「あ、うん。それ分かってたからさ。だから、芝崎に送ったのね。確約書」
 「芝崎、ですか?」
 三神は一瞬不思議そうな顔を作った。そして彼がペテンに気がつくよりも先に小娘は言った。
 「市原さんはイベントで忙しくて、郵便局にいく暇もないでしょう、だから芝崎さん、あんた、市原さんからサイン貰って同封の封筒に書面入れて送り返してくれって」
 「……」
 「芝崎ってさ、市原のことが嫌いで、その地位を狙ってるわけじゃんか。そういう芝崎に、市原にダメージを与えられる場面を作ってやれば……」
 「当然乗ってきますね」
 「そうっしょ?」
 丸山花世は軽い口調で言った。
 「そしたら、すぐに書面返ってきた。多分、芝崎が市原を責め立てて、はんこ押させたんだと思うよ。サインの文字、震えてて、すげー汚かったし」
 小娘は言った。

 確約書
 
 大井弘子、丸山花世の両名(以下甲、乙とする)は16CC(以下丙とする)と次のような項目で合意した旨をここに記載する。
 
 ?甲、乙は十六CC製作中のプレイステーション2ソフト、エターナルラブ六の製作から無条件に外れる
 ?丙はその際、甲、乙が製作したプロット、シナリオの全てを破棄する
 以下略――
 
 「そんな書面に法的な根拠が本当にあるかっていうと……疑問なんだよね。でも、大事なのはそこじゃない」
 「……」