むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編5
どこまでも市原は愚かであった。
そして丸山花世は突然キレた!
「おい、なんだ、その態度は!『やってやってもいい』だとッ?」
妹は姉が何を思っているのか理解している。
この世には許される発言と許されない発言があるのだ。
「やってやってもいいだって? おいッ! てめー、何様のつもりだ! 間ッ! 出て来やがれ、このー!」
小娘はテーブルを蹴り飛ばし、そのあまりの勢いに芝崎も呆然となった。
「そうじゃねえだろ! 『オレも悪いところがあって、済まなかった! 心を入れ替えるから一緒にやってこう』っていうのがスジだろうが! それを、てめーなんだとーっ! 『やってやってもいい?』 てめー、どんだけ偉いんだよ!」
間が言った『おまえ』が市原を指すのか、それとも、大井弘子たちを指すのかは分からないが、それはどうでもいいのだ。小娘が激昂しているのは自分が侮られたからではない。作品と作品についているエターの小さな女神、さらには物語を司る神さまを冒涜したからである。
「なんだ、そのヒネた態度は! てめーは田舎のヤンキーかよ! おい、ちょっと、早く、間の馬鹿、呼べッ! ちんちくりんめ、目ん球抉り出してやる!」
小娘は怒りが収まらない。そして、大爆発する丸山花世を見ている芝崎次郎は笑っている。楽しいからではない。恐怖しているのだ。
「花世……」
姉が言った。
「花世、落ち着きなさい」
「けれど……アネキ、おかしいよ、この会社の社員、みんな狂ってるって!」
小娘は半泣きである。
作品名:むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編5 作家名:黄支亮