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除霊師~藤間道久の物語 1・藤間道久(1

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美食を求める癖があり、自分の舌が納得しないものは口にしないのだ。
昔はよく残飯扱いされ、正直死にたいくらい何度も凹まされたが、その分料理の上達は早かった。
それでも亜理紗さんに比べたらまだまだヒヨッコ扱いだけど。


「でー、どうだったのよ、今回のは?」

すでに1ホール分のアップルパイを完食していた悠希さんは、突然真面目顔で仕事の話を振ってきた。

「だから言ったじゃないですか、簡単だったって。ま、その分胸糞は悪くなりましたけどね。」
「聞かせてよ。今回は犬の幽霊だったんでしょ?」
「ええ、どっから話しましょうかね。」


ここからは俺と悠希さんの人には知られたくない、知られてはならない人外の領域での出来事だ。



俺、こと藤間道久は霊能力者である。
視える触れる憑かれる喋れる(動物とも)、自分で言うのもなんだが
かなりハイスペックの霊能力者ではある。
元々、父方の家系では昔からそういった方面の能力を持った人間が
かなり高い確率で生まれてくることが多いそうだ。
俺がそんなことを知る前に親父は死んでしまったが、
運の良いことにじいちゃんは生きていて、
霊能力や除霊について詳しい話を教えてもらい、
なんとか能力者としての体裁を整えることができた。
悠希さんに代わって除霊を行うため、そして自分の才能を最大限生かすためだ。

悠希さんもかなり有能な霊能力者であり、仕事の傍らに除霊の仕事を請け負っていたのだが、
他の義肢装具制作所から独立して、すぐに思いのほか早い段階で仕事が軌道に乗ってしまった。
そして、除霊の仕事を断念せざるを得ない状況に陥りそうだったときに
俺と出会い、その仕事を俺に引き継いで自分はあっさりと引退してしまった。
引退したと言っても現場仕事を辞めただけで、
基本的に仕事自体は悠希さんを通して請け負われ行動するのは俺の仕事になった。



それでは少し、俺の右腕について話をしよう。



悠希さんと出会ったあの日。




俺は右腕の肘から下を悪霊に喰われた。
その言葉通りに、肉体と一緒に霊体も喰われてしまった。




あの頃の俺は、両親を亡くし、
自分の生きる目標と意味を見失いかけ、
自暴自棄になり、路上生活者のように生活をしていた。

朝は街を歩き、夜は廃墟を寝床にしていた。

そしてあの日、寝床にした廃墟にはその悪霊がいた。