除霊師~藤間道久の物語 1・藤間道久(1
「その方がまだいいです。調整出来るなら一刻も早くしてください。」
「わかったわよ。つまんないな〜。でも今は無理よ。今作ってる義足も仕上げなきゃならないし、次はちょっと急いでくれって言われてるし。」
「はぁ、マジっすか。右手を使わない生活って結構厳しいんですけど…。」
「いいじゃない、別に。もうすぐ冬休みでしょ?」
「まあ、そうだけどさ。」
「じゃあ大丈夫でしょ?それに急だと森下先生の予定も合わないだろうから。」
「じゃあ、早く話しは通しておいてくださいね。」
二人で話しをしていると、事務所の入り口が開いてすぐにメイド服を着た女性が大量の買い物袋を持って入ってきた。
髪は黒髪だが、眼は欧米人特有の色をしている。この相反する事実が彼女が日本人以外の血を引いていることを安に想像させられる。
「ただいま帰りました。あら、道久さんも帰られましたか。」
「おかえり、亜理紗さん。って、何でそんな格好?」
「私の趣味よ。」
「…やっぱり、そうだと思いました。」
「い、いいんです、道久さん。私もちょっとした興味本位でこの格好で買い物してみたかったんですよ。」
「…マジで言ってるんですか?」
ちょっと詰まった言い方をしているってことは、ほぼ強制的に行って来いって言われたんだな。
ま、いつものことだ。でも、自分の意思ってのも半分本当っぽいけどな。
さて、ここで俺の事を話そう。
俺の名前は藤間道久、都内の大学に通うごく普通の大学生、一部を除いては。
ここは俺の家でもあり、悠希さんの自宅兼事務所。
6年前、俺は悠希さんに命を救われ、そのまま引き取られてここで暮らしている。
ソファーに寝そべっている眼鏡をかけた女性が、その峰岸悠希さん。
峰岸義肢・装具製作所所長にして唯一の義肢装具士であり、保護者であり、俺の命の恩人。
生きる希望も目的もなかった俺に希望という名の義手を与えてくれ、その上身寄りの少ない俺を引きとってくれた親みたいな人だ。
年はそんなに離れていないから、姉といった方が正しいかもしれない。俺には他に兄弟はいなかったけど、姉さんがいたらこんな感じなんだろう、っていつも思う。
黒髪は首元で切り揃えられ前髪は何故か眉の上で揃えられている。いつも動きやすいように黒のパンツスーツを履いていて、上着はその日の亜理紗さんの気分によって変わる。
作品名:除霊師~藤間道久の物語 1・藤間道久(1 作家名:ガチャタラ