除霊師~藤間道久の物語 1・藤間道久(1
ま、確かにそれらしくはないがね。その辺のどこにでもいるおっさんじゃよ。」
「まあ、確かにそれらしくは見えなかったですけど、今喋ってみた感じでは、
懐の大きさを感じることができました。
今日は、悠希さんが来る予定だったんですけど、仕事が忙しくて来れないということで
自分が代わりに来させていただきました。」
「そうか、それは残念じゃの。だが、あの峰岸君が代わりに寄こすということは、
君も、その、霊能力者なんじゃろ?」
そう言った社長は、下からサングラスを下げるようにして俺の眼を覗き見ていた。
それはまるで心の中を視られているような錯覚に陥るものでもあった。
“この人に嘘は通用しないみたいだな。”
「ええ、そうです。」
「なるほどのぉ。どことなく峰岸君に近い雰囲気を感じるし、信じてもよさそうじゃの。
で、話は彼女から聞いておるのかね?」
「はい、おおまかなところは。それで早速現場を見せてもらおうと思っているんですが。」
「ほうほう、話が早くて助かるの。それじゃあ、現場まで案内させてもらおうかのう。」
はい?何を言っているんだ、この人は。
「えっ、あなたが案内されるんですか?」
「そうじゃよ?別に君がおるなら危険はないじゃろうに。
それにこんな時間に幽霊が活動するとは儂は思わんのじゃがね。」
「まあ、確かにそうなんですが、場所さえ教えて貰えれば後は自分一人で探します。」
「まあ、正論じゃな。しかし、この場で人が死んでしまったということも事実じゃからな。
ここの責任者としてしかるべき責任を取らねばならないんじゃよ。さあ、こっちじゃよ。」
と、彼は有無をそれ以上有無を言わさずマンション跡へ歩いて行ってしまった。
仕方ない、と割り切り、前を行く彼の後を追うようにして付いていくことにした。
マンションはコンクリートが剥き出しになっていて、タイルや壁紙はまったく貼られていない状態だった。
コンクリの状態はそんなに良いわけではなく、ところどころに小さなヒビがあり、
大きな地震が一度でも来たら倒壊してもおかしくないようには見えた。
建築途中で放置されてしまったマンションは一部屋3LDK約90?が一階ごとに8部屋
最上階の7階だけが、4LDKで構築されている。
最後まで建築されていれば、立地条件もそれなりによいためあっという間に完売していたであろうこの土地は
作品名:除霊師~藤間道久の物語 1・藤間道久(1 作家名:ガチャタラ