小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

銀の絆

INDEX|7ページ/17ページ|

次のページ前のページ
 

 それは本当に突然のことだったが、柚子は打たれた頬を押さえながら起き上がり、すぐに麻子に縋るように抱きついた。
「どうしていなくなったりするの?柚子は麻ちゃんを愛しているのに!」
「嘘だ!柚子はいなくなるんだ!あたしを置いてどこかへ行っちゃうんだ!」
 こうなるともう、麻子は聞く耳を持たない。
 だが柚子は分かっている。麻子は過去に『何か辛いこと』があったのだ。誰か大切な人を失ったのだ。だから時々こうして錯乱するが、それだって全部柚子を愛するが故だ。
 誰よりも何よりも大切に思っているからこそ、失くすことを恐れる。
 そうだ。そうに違いない。
 柚子は麻子を掻き抱いて、その背を髪を撫で摩ってやった。
「柚子はどこへも行かないよ。麻ちゃんと離れるなんて堪えられない。柚子は……」
 ぎゅっと、麻子の手を握る。麻子は涙に潤んだ目で柚子を見て、押し倒すようにして覆いかぶさってきた。
「嘘だ。嘘だ、嘘だ、嘘だ!」
 麻子の細い指が柚子の白い首にかけられる。これには流石の柚子も顔面を蒼白にして、麻子を凝視した。
「やめて。麻ちゃん……」
「柚子はいけない子だ。あたしに嘘をつく」
「違う!麻ちゃん、違う!」
「うるさい!」
 指に力が込められ、気道が塞がれる。柚子の目に生理的な涙が浮かぶ。
「麻……ちゃん……」
 苦しい。意識が遠くなる。麻子の目は焦点が合わず、浮遊している。
 駄目だ。駄目だ!
 だが麻子の力は弱まらない。柚子の力では麻子を押しのけることができない。
「柚子。柚子。いつまでも傍にいて。傍にいてくれれば、許してあげるよ」
「傍に、いる……!いるよ……っ!」
 ふ、と力が弱まった。その隙に麻子を引き倒すようにして抱きつく。押さえ込み、ぎゅうぎゅうと抱きしめる。
 その間も柚子はむせて、失いかけた酸素を必死に取り込もうとする。
「麻ちゃん……!」
 見ると、麻子は真っ直ぐに柚子を見つめていた。
「柚子……」
「麻ちゃん……」
 二人は抱き合って、泣いた。
 こんな麻子を置いて、どこかへいける筈がない。こんなにも激しく求められているのに、それを裏切る筈がない。
 熱く痛む頬も、圧迫された喉も、何もかもを受け入れる覚悟はできている。
 首輪のように銀の指輪を首からぶら下げた柚子は、何もかも、麻子の思い通りになる覚悟はできているのだ。
作品名:銀の絆 作家名:ハル