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銀の絆

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 女性は暫く口を開けたまま麻子を凝視していたが、やがて両頬を赤く腫らした
柚子を見て、身を震わせた。
「なに……してるの?」
 柚子は僅かに混乱する。この人は誰だろう。麻子は女性を凝視したまま、薄く
笑った。
「愛を確かめ合ってたの」
「嘘よ……」
「嘘じゃない」
 麻子が柚子の腕を引いて、抱きしめた。
 柚子のシャツのボタンを外して、首元から銀の指輪を引き出す。
「ほら。あたしとお揃いの指輪。これはあたしたちの愛の証」
「伊原、柚子ちゃん、ね……」
「なんだ、知り合い?」
 麻子に言われて、柚子は首を振る。
「し、知らない」
「私達知らない同士よ、伊原さん。ただ、私の弟が貴女の同級生なの」
「弟?」
「信彦っていうの。クラス委員よ」
「ああ……」
 彼女が委員長の言っていたカウンセラーをしている姉か。
 カウンセラー?
 柚子は不思議に思った。
 何故カウンセラーが麻子の知り合いなのだろう。
「麻ちゃん。この人、カウンセラーでしょ」
「そうだよ。この人は私の先生なんだ。典子先生だよ。ご挨拶なさい」
「うん。こ、こんばんは」
 柚子が恐る恐る会釈をすると、典子は頷いて、
「こんばんは。こっちにいらっしゃい」
と言った。
「弟から聞いてる。貴女は度々、こうして麻子ちゃんから暴力を受けてるのね」
 暴力。
 その言葉に心臓を抉られたような気がして、麻子の腕にぎゅっとしがみついた。
作品名:銀の絆 作家名:ハル