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神社奇譚 2-2 未確認飛行物体

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 2


霊障という言葉があって。
それは、神道の世界では。
現世(ウツシヨ)のものではなく
幽世(カクリヨ)にあるはずの幽霊など(カスカナルタマ)によって
その生活や身体に障害(サシサワリ)が起こることを指すのだが。
確かに土日だけの手伝いの私ですら、そのような問い合わせを聞く機会は
多いし、管理人からすれば掛けられる電話の半分はそれに似た類のもので
あるという。

そして宮司もそういったものと対峙することもあって。
神社神道で一般的に行なわれるそういった類の儀式を
粛々と行なうのだそうだ。
それ以上のことは「出来ない」し、出来ても「しない」そうだ。
ただそういったことに長けている神職もいて紹介はするらしい。
ただそういうことは、稀である、と。

多分にそちらの世界に近づくにつけ
なんとも奇妙で様々な「浄霊」であるとか
「憑き物はがし」であるとか
「拝み屋」であるとか
「祈祷師」であるとか
中には如何わしいものも含めて“魑魅魍魎”の如く
跋扈する世界でもあって。
さすがにそういったものとは一線を画す必要もあって。

「出来るだけのこと」はするが
「出来ない」ことは「しない」という態度は
持ち続けなければ、それは神職として如何なものか、と。

そういったことを云われると、確かにそうだよな、とも思うわけで。
しかしながら年の功なのか、特殊な事象に精通しているのか
この宮司を頼ってくる者も多いのも違いなく、総じて云えば
深くは知らないがそちらの方の権威なのかもしれない、と。
思わせる節は、今までも多分にあった。

だからそういった向きの話は慣れっこなのだろう。
勝手に想像するわけなのだが。
今回はどうも様子が違う。
それは幽霊(カスカナルタマ)ではなく・・宇宙人だから。

「もし見てみたいといわれるのであれば、見てみるかい?
宇宙人を・・」
宮司は私らふたりに険しい表情のまま云った。


え?触らぬ神に祟りなしって云うじゃないですか_?

でもまさか・・そんなの居るわけ無いですよね_?

「実は・・ある写真を持ち込まれたんですよ。
宇宙人らしきものが映りこんでいる、と謂われているんですがね。」

え?そうなんですか・・でも見ちゃうとなんかあるんじゃ・・

でもデジカメでいろいろと弄くるソフトもあるし・・

宇宙人だってほら、「未知との遭遇」とか「E.T.」とかねぇ・・

え?まあさか・・「エイリアン」みたいな怖い奴ですか?

見るぐらいなら・・

私の心は大海のなかで台風に玩ばれる小型漁船の如く
激しい衝動に揺り動かされて決める事がままならなかった。
が、女管理人の決断は異常に・・早かった。

「見せてくださいな。」
え?
「なぁに、見るぐらい・・」
そ、そうですよね・・・

得てして女性のほうがこういうときは度胸が据わっているもので。
宮司は頷くと袖口から預かったとされる件の写真を数枚出した。
その写真を覗き込むと女管理人は声をあげた。
「へぇー・・・これがねぇ・・」
そして私も覗き込むと思わず声をあげてしまった。
はぁぁぁぁぁ・・・これが・・・、と。

この写真を預けた願い主は、その写真の真ん中に映っている
我が子の身の上に、そして自分を含め家族の身の上に何も起こらないよう
御祓いをしてもらい、不可思議なものが写りこんだデジカメ写真と
データディスクをお焚き上げしてください。ということなのだが。

宮司はいろいろと考えたそうなのだが。
「かぐや姫は・・宇宙人じゃなかったのかなぁ」
はい?
「古来、日本人は宇宙人と接してきたんじゃないのかなぁ」
なるほど。
「しかし・・なんのために?」
うーん、なんででしょう・・。

「きっと、おともだちになりたかったんですよ。」
女管理人は平然と言い放った。
「うーん。」宮司は考え込んだ。
私も宮司の真似をしているわけではないのだが、うーん。と考え込んだ。
「この女の子とおともだちになりたかったんですよ。」

「かも知れん。・・し、違うかも知れん。うーん。」

宮司は腕を組んで考え込んだ。
確かに、おともだちには・・ちょっと慣れそうも無い近寄り難さのある写真だ。友情と云うのは、望まれない事もありそれが元で不幸な戦争になることもある。しかし異文化を全て敵に廻すなどと云うのは理に適わず
他の宗教・・例えば仏教やヒンドゥー教など・・をも取り込んできた
「神道」の立場として如何なものか。・・なるほど。

例えばこれが吉兆の印でないと誰が云えよう。
例えばこの真ん中に映っている女の子の守護神ではないと誰が云えよう。

「これはホラ、テレビのUFOの人に鑑定してもらったら・・」
あぁ矢追純一は私の世代のヒーローの一人には違いない。
彼ならなにか明確な答えを出せるかもしれない。
だが・・それが例えば「ニセ写真だ」とか云われたら。
もしそうするなら願い主達はとうにそうしていたはずであり
何も小さな神社に持ち込む必要などなかったのだ。
確かなのは願い主の一家は極端に「脅えている」ことである。

「話を戻すとね。これはいったいなんなのか、ということでもあって。」
この写真を預けた願い主一家はすでに「宇宙人」である。と、
言い切っていたのだが。
確かに「宇宙人」にも見える。
むしろそう謂われれば「宇宙人」にしかみえない。

例えば霊障といえば元を糺せば「人」なり「獣」なり「木」なり
「物」なりに因果として結びついてくるのであるが、
この写真に写りこんでいるものはそういう類のものではない。
確かに、想像を絶するようなものなのだ。

考えれば考えるほどに宮司は
はたして日本古来の神道による手法によって
この写真がもたらすものに対処できるのか_。
とても悩みぬいて。「胃が痛い」状態となった。という。
しかし宮司には算段が無くもなかった。