学園を制し者 第六話
(……まぁ、あいつのことだから何かしらの不正を働いたんだろうなぁ)
「ばぁかなことをいうんじゃない!」
「………………」
狭山が現れた…………机の下から……
背後とられるならまだしも、地面から現れるのは反則でなかろうか。どこぞの勇者もびっくりだ。
「ここは生徒会公認のれっきとした『生徒学園ライフ支援同好会』の部室だぞ!」
「いろいろとツッコムことが多すぎて、なんもいえねぇ……」
「いささかネタが古くないか?」
「う、うるせぇよ!」
二度目の流行語大賞をねらってみたがうまくいかなかったようだ。
恥かきなう。
「ここが正式な部室であるというのは本当だぞ。ここにしっかり生徒会からの許可証があるのだからな!」
狭山は懐からA4ぐらいの大きさの紙を取り出した。紙には大きく許可証と書かれている。
「まぁ、お前の姉に『お宅の弟さんが部室のないひもじい部活動を行うはめになってもいいのか?』といったらすぐにもらえたのたがな」
「思いっきり不正じゃねぇか!」
「ハハ……ナンノコトヤラー」
「目を合わせろこら!」
(……みー姉もそんな簡単に部室渡すなよ)
自分で言うのもなんだが、みー姉は少し弟に甘すぎると思う。別に厳しくしてほしいわけではないが公私の分別ぐらいはつけてほしい。
「ていうか、よく風見山が許したな」
ほかの生徒会役員はまだしも風見山はこの話を知っているはずだ。
真面目な彼女がこんな話を簡単にOKするとは思えない。
「なぁに、お前の写真をゲフンゲフン」
「…………何やら不吉な単語が聞こえた気がしたんだが?」
「気のせいだ」
「そ、そうか……」
なんだろう……背筋がすごく寒い。クーラーをきかせすぎたのだろうか。
「それよりも今日はよく集まってくれた」
演技がかった口調でウェルカムとでもいうように両手を広げる狭山。
「へんな前置きはいいぜ。今日の仕事は何なんだ?」
健太の意見には至極同意なのだが
「…………健太。質問する時ぐらいはエロ本から目を離せよ」
「断固拒否する!!」
「……力強い否定だな」
目が血走っているのがちょっと怖い。
「当たり前だ! 俺がエロを忘れるときこれすなわち世界の終りと心得よ!」
「簡単に世界を滅ぼすんじゃねぇ!」
「俺がエロを忘れるときこれすなわちキャラ崩壊と心得よ!」
「しらねぇよ!」
「俺からエロを抜いたらただのイケ面がのこるだろ」
健太はどこぞのホストのように髪をかきあげた。無論エロ本を見ながら。
「お前からエロを抜いて残るのは平和な世界だよ……」
「うほぉお! やべ、よだれ出てきた」
俺のあきれた溜息は健太には聞こえていないようだ。
「ふっはっはっは。六車はそれでいいのだ」
いったい、何に納得しているのか狭山は腕を組んでうんうんとうなずいていた。
「話をもとに戻そう。メールで話した通り、今日は『生徒学園ライフ支援同好会』としての仕事が来ている」
「ああ」
俺達の『生徒学園ライフ支援同好会』は各部活や生徒、委員会から先生にいたるまで様々な団体もしくは個人の『正規』依頼を受ける、いわば万屋的存在だ。
もちろんこっちは表稼業で、もう一つの『学園征服部』は一部お得意さんからの『条件付きの裏的な仕事』を受けるのがおもな活動内容である。
「……なぁ、ちょっといいか?」
俺は前々から疑問に思っていたことを狭山に聞いてみることにした。
「学園征服部っていったい何なんだ?」
「……ずいぶんと今更な質問ではないか?」
「んなこと言われたって……何にも説明しないまま俺と健太を巻き込んだのはお前だろ?」
「そうだったかな」
「忘れたのか?」
「ふぁあはっはっはっは! 細かいことなどいちいち気にしておらんのだ」
「…………いばるんじゃねぇよ」
もともと『生徒学園ライフ支援同好会』も『学園征服部』も狭山が一人で作り上げたものである。
俺と健太はまぁ……その……なんというか、不運な事故に巻き込まれ狭山と知り合うことになったのだ。
細かい説明は面倒なのでまたの機会にする。
「まぁいいだろう。そんなに知りたいなら教えてやる」
「………………」
なぜ、こいつはこうも上からの物言いなのだろうか
「『学園征服部』とはつまり、この学園を征服することを最終目標とした秘密組織である!!」
「うん……まぁ、名前のままだな……」
秘密になっているかどうかははなはだ疑問だが
「そういうことを聞きたいんじゃなくてだな……」
「なんだ?」
「例えばだ。最終目標は学園を征服することなんだろ?」
「うむ、その通りだ」
「どういう状態が学園を征服したことになるんだよ」
「俺が生徒会長になったその時だ」
即答だった。てか……
「……生徒会長になりたいんだったら選挙にでろよ」
「ばぁかなことをいうんじゃない! それでは『革命』ではないだろう! 俺は革命児だぞ!」
「い、意味がわからん」
狭山の剣幕に少し気おされてしまう。
よくはわからないがこいつにはこいつのこだわりがあるのだろう。
「でも、学園を征服するとか言ってるけど、今までの活動を見てると『生徒学園ライフ支援同好会』の延長的な活動にしか見えないんだが?」
依頼を受けてそれをこなす。基本的スタイルは二つともまったくおんなじだ。依頼を受けてるだけで学園を征服できるとは思えない。
「俺が『学園征服部』として依頼を受けるときに『条件』をつけるのは知っているな」
「ああ、『必ず生徒会と対立するような依頼であること』っだったか?」
「よくわってるじゃないか。では、なぜそのような条件を付けるかはわかるか?」
「さぁ?」
それがわからないからこうして質問しているのである。
「大きな理由としては二つある。まず一つはパイプづくり。革命は俺のことを支持する人民がいて初めて成り立つものだからな」
「……人民ってのは生徒のことか?」
「そうだ」
「わかりずらいいいまわしだな」
「そしてもう一つは、生徒会と対立して勝利すること。つまり、今の生徒会の無能を証明することだ」
狭山は俺を無視して話を進める。
「確かに、今までは依頼を受けてから動くという、どこか受動的な活動が多かった。しかし、今回は違うのだ!!」
「……やっぱり学園祭で何かやらかす気なのか?」
俺の質問に狭山はニタニタと含み笑いをもらしながらも何やら考えるようなしぐさを見せた。
「ふぅむ、まだ準備段階だ。計画がもう少ししっかりと固まったら貴様らにも動いてもらうからしばし待て」
「…………俺らが手伝うのは決定事項なのね」
「あたりまえだろう」
狭山は何をいまさらとでも言わんばかりに肩をすくめた。
「それよりもまずは今回の仕事だ」
「そうだったな、どこからの依頼なんだ?」
「料理部だ」
「料理部?」
「うむ、先ほど岡田から直接依頼を受けた。なんでも学園祭の『メイド喫茶』でだす料理の味見をしてほしいらしい」
「料理部メイド喫茶やるのか……」
「うむ、被服部と合同で行われる出し物らしい」
「へー」
うちの学校の学園祭の出し物は部活単位、もしくは生徒たちの有志によって行われいる。
それでも去年は募集数を大きく上回り抽選漏れした出し物がたくさんあったらしいのだから、この学園には我の強い生徒が集まっているのだ。
作品名:学園を制し者 第六話 作家名:hirooger