HOT☆SHOT
凪咲、これを書いているだけで興奮してきちゃったかもですう。
それでは、くれぐれもあのメス亡霊には気をつけてくださいね。
あなただけの凪咲
読み終えて顔を上げると、麻亜耶がパンツの入っていた箱を持ち上げていた。
それを見て虎康は驚く。
その箱には「燃料:発火性危険物」と書かれていた。
「虎康〜、あんたそのパンツでナニをする気よぉ? そんなに、その女がいいわけ?」
「え? 何でそうなるの?」
「もう、許さない!」
麻亜耶は杖を手に取り、虎康に向ける。
「はは……は……たしかに燃料だ」
「ナニ言ってるの? もしかして、もうあの女のこと想像してんじゃないでしょうね?」
杖から迸る雷が大きくなっていく。
「星色麻亜耶、イッキまーーーっす!」
山咲恵介は、誰もいなくなったミッションルームで一人、仕事を片付けていた。
いや、一枚の写真を見ていた。
彼は一人、呟く。
「ベストショット……お前が撮ったベストショットな。実はあれじゃないんだよね。でも、これだけは流石に、誰にも見せられないしな。特に小絵と凪咲には……」
その時――、
部屋の入口が開いたかと思うと、今、口にした二人の女性が現れる。二人ともいつもの格好に戻っていた。
「なんだ? 山咲、まだ帰らないのか?」
「山咲さぁん、一緒に帰りましょうよぉ」
「お! おお、今から帰るところだ。ちょっと外で待っててよ。すぐ行くから」
二人は、わかったと頷いて部屋を出て行く。
山咲は身支度を整えると、先程まで見ていた一枚の写真をもう一度、見る。
その写真に写っていたもの。それは――、
昼間、山咲が虎康に見せた写真とほぼ同じだった。
ただ、違う箇所といえば一言で表すなら、恋だ。
生死を分けるシーンの中で、ひたすら恋に命を燃やす一人の男と一人の少女の姿。
恋人同士や夫婦がキスしている写真とか、世の中には数多くあれど、山咲の知る限り、ここまで胸を熱くさせる写真なんてものは観たことがなかった。
その写真には、口づけを交わした直後に初めて相手を見つめる瞬間が写っていた。
同じ見つめるにしても口づけを交わす前と後では違う。
なぜなら、口づけを交わした後で魔法から醒めてしまうような恋だって世の中には存在するのだから。
「『写真は多くを語りかけてくる』……か。まぁこの先、どうなるかはわからないが、時を超えた恋ってどんな味がするのか、今度、俺に聞かせてくれよ。お二人さん」
そして、山咲はもう部屋の出る前に、もう一言、付け加える。
「あ、それとだな。よくよく考えればその写真、ベストショットじゃないよな」
親指と人差し指を立てた手をデスクに向け――、
バン!
「ホットショットだ」