小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

HOT☆SHOT

INDEX|17ページ/39ページ|

次のページ前のページ
 

第一話 Virgin☆Shot!  Last stage



    6

『虎康、見直したぞ。本当にいたんだな! 巨大ロボ! スゴいなあ、ロボ』
 ずずーーーーっ。
 大判の写真をヒラヒラさせながら、ご満悦なその声の主は小絵だった。
 小絵は歴史カメラ(キャメィーラと呼ぶらしい)から送られてきた写真を手にしていた。
 写真は当然、虎康が危険を冒して撮ったものだ。
 カメラも無傷のまま回収できたし、吹っ飛んだドアも今はなんとか、くっついてはいた。隙間風が入ってくるのは気のせいだろう。
 虎康と麻亜耶は座席の上で足を丸め、鼻水をズルズル言わせながら、ジトーっと、モニターを眺めていた。
 車内にはキャンプ道具やら救急箱やら、ある程度は揃っていたので、その中から毛布を取り出しそれもフル活用。ヒーターもばっちりだ。
 風邪というのは夜から朝方にかけてが辛い。
 それにも関わらず、どうしても打合せするっていうから、こうしてずっと座っているのに、一向に始まる気配が無い。
「……あの。そろそろ、"ズズッ"始めませんかぁ? きついッス。こちらは、ただひたすらに、きついッス。お腹も空きまくりで、きついッス」
 今回のことでわかったことがある。中条小絵はメカおたくだ。しかも、かなりのロボ好き。
 まったくあんなファッションモデルばりのいい女が、巨大ロボの写真を見てクルクル踊っているとはね……。
『おはようございまぁす。せぇんぱい。あれぇ? せぇんぱい、風邪ひいたんですかぁ?』
「おはよー。うん、風邪ひいちゃったんだよね」
『へぇー、でもでも、なぁんで、そちらさんもズルズルしてるんですかぁ?』
「"じゅるじゅるー"、ふふーんだ、あんたがいないうちに、あたしたちはね、"ズッズズッ――っ"って濡れちゃったんだから! イイでじょー。もうあんたなんか、"ズズじゅージュッ"なんだから。ぶぅえっくしゅ」
 いや、何言ってるのか、もう全くわからん。通じるわけ無いだろ!
『なぁんですってぇ。そんなことは凪咲がぜーったい! 許しませぇん。本当に雨の中、先輩はぁ、凪咲の居ない所で、あ〜んなことやこ〜んなこと、やったのですかぁ? もう、早く帰ってきて下さぁい。凪咲が素肌で温めてあげますよぉ』
「はぁん? 素肌ですってぇ!? ぶくしゅっっ! そんなの必要ないわよ。だぁってねえ、そいつぁ、わっちが今やっちまうからサァ! "ずりゅりゅー"」
 何の打ち合わせだこれ? とんだ負けず嫌いだこいつら。それに話し方が、もうおかしいだろ。
「――って!」
 助手席で麻亜耶がすでに前ボタンを全開にしていた。細い首筋から始まり鎖骨を通って胸の谷間が顕になっている、おへそもコンニチワしている。残念というか幸いというかブラはしてあった。ちなみに上も青白ストライプだ。
「って、コラコラコラー。ダメでしょーが!」
「虎ぁ、なーんかあたしぃ、頭がほんわかしてきてぇ、気持よくなってきたぁ。なんか天使が降臨してきてるよぉ。ぶううえっくしょっん!」
「だー! その気持よくなってきたぁは、命に関わる気持ちよくなっただよねぇ! その天使さんには早く帰ってもらいなさい! それ以上、気持ち良くなっちゃだめー!」
 急いで麻亜耶のボタンを締めていく。気のせいかモニターから殺気が漂ってきているのが、わかる。
「ぶぅあっきゅっっしゅん! くしゅん! ぶくしゅ! ぶくしゅぶくしゅ! じゅるっつーー。ぶぅえっくしゅ!」
 無事、すべてのボタンを締め毛布をかけ直し、横にしてやると麻亜耶は眠ってしまっていた。さっき、飲んだ風邪薬が効いてきたんだと思う。ほんとに危なかった。
 虎康は顔面に付着した鼻水をティッシュで拭き取りながら、モニターに向き直った。
『せぇんぱい、なんですかぁ、そんなにそのメス亡霊の粘液かけられてぇ、ご満悦ですかぁ? そんなの凪咲の粘液の方が凄いんですからねぇ』
 色々とツッコミたいけど、ここは抑えてですね――、
「その前に、どう見たらそういう解釈になるのか、気になってしまうよ。それよりほら、もう寝ちゃったし俺と凪咲だけだね、ね?」
 少し咳が出るけど、薬が効いてきたようだ。身体の方も少し楽になってきた気がする。が、油断は禁物だ――相手は凪咲だ。パーレイといい、こいつはかなりのヤリ手だ。
『あ、そうですねぇ。それじゃあ凪咲、今日は先輩とぉ、何をしようかなぁ』
「あの、打ち合わせでしょ?」
『あぁぁ、そうでしたねぇ。それじゃあ凪咲はぁ、山咲さんと代わりますねぇ』
「え? 凪咲は参加しなくていいの?」
『凪咲の分はぁ、終わりでぇっす。あ、そうだ後で美味しいお菓子、送りますねぇ。じゃ、続きは先輩が帰ってきてからですよぉ。徹底討論♪』
 そう言って、凪咲は席を立ちふんわりとスキップしながら去って行った。
(ふう、凪咲――これ以上、こいつに燃料を投下するのはヤメてくれよ。でも、お菓子は大歓迎だぞ。昨日から何も食べてないしな)
 とにもかくにも、ようやく前に進めそうだ。山咲、今やお前だけが頼りだ。
『ふわぁ〜、眠い。やっと話せるな、虎康』
「山咲、俺は今日も超絶、忙しいんだ。だから手短にな」
『どっから、そのワードが出てくるんだ? それより、送られてきた写真だけどな――』
「ん? どうした?」
『一応、お偉いさん達は気に入ってくれたみたいだぞ』
「おぉ、そうなのか? そう言えば、自分で撮っておきながらまだ見てないんだよな。そこに撮ったやつあるだろ? ちょっと見せてくれよ」
『オッケー! 今から画像データ送るから、見てみろ』
「わかった……」
 モニターに次々に映し出されていく。
「……」
「……」
「……」
 全画像の表示を終え、モニターが切り替わると、
『どうだった? どれも鮮明で感動ものだったろ? 首相とか大喜びだったぞ。編集長なんて超ご機嫌だったぜ』
「おい……どの写真を見せたらご機嫌だって?」
『ん? そうだな、例えばこれとか? これとか? この角度から撮ったやつとか?』
「どれもM字開脚じゃねーか! 他の写真はどうしたよ? ロボはどうしたよロボは? 小絵が持ってたろ? あれだよ、あれ」
『あー、あれね。一応、何枚かは選別して政府や研究機関に送ってあるよ。あ、そうそう、忘れてたけど一応、これから見せるやつが今回のベストショットだ。みんな大絶賛だったぜ、ロボと一緒のお前たち――』
 それを聞いてドキっとする。
(そうだ――、俺が気になっていたのはその写真なんだ。あの時、俺はオートにしたカメラを囮に地面に置いたんだ。そして、俺と麻亜耶の上を太陽の反射光に反応したロボが通過していった。麻亜耶が言っていたように、あの時、俺は賭けを二つしたんだ。一つはカメラの角度と太陽の出現。そして、もう一つはロボが反応する優先順位だ。結論から言えば、俺たちの動きよりも光にあのポンコツロボは反応した。もし順位が逆だったら、俺たちはここにはもう……だが、俺たちはこうして、生きている)
 虎康は安静に眠っている麻亜耶の寝顔を覗き込む。その様子を四角い眼鏡を掛けた山咲が、見守るように眺めていた。
(そして、その時に撮られた写真のことがずっと気になっていたんだ。仮にそれが写っていたら、皆に合わせる顔が無い。なぜならあの時、俺は私情を持ち込んだのだから)
作品名:HOT☆SHOT 作家名:櫛名 剛