HOT☆SHOT
『まず、お前は巨大ロボの写真を撮れ。なるべく近くでな。政治家連中はじめ、関連企業や研究所の幹部連中は歴史の証明として巨大ロボの写真を望んでいる』
「わかった。やってみる」
『気をつけろ。次にチロリあは〜ん号だ。バッテリーは生きているようだが、いつでも発進できるようにエンジンを始動させろ』
地響きが徐々に大きくなってきていた。
「虎康、やばいよ。もう、近いよー」
「えっとだな、小絵……コレ……」
『――っ! お前、それは? 何をした?』
恵介が顔を覗かせる。
虎康は壊れたハンドルをモニターの前で見せていた。
また地響き――ドン、ドン、と巨大なハンマーのようなものが大地に衝撃を与える度に、虎康と麻亜耶の体が宙に浮く。
「車がいつまでも止まらなかったから、気合を入れてやったんだ」
『はあ? 何、思春期の主張みたいなこと、やってんの? 壊れたバイクじゃ、もう走れねぇんだよ!』
「ふっ、恵介くん。もうやっちまったのは仕方がないんじゃないカナー」
『ムカつく、こいつ。なんかすっげぇムカつくんですけどぉ。まあ、アレだな。こうなったら外からショック与えてエンジン始動させるしか無いな。でも、そっちの世界、世紀末状態なんだろ?』
「ああ、そうなんだよね。で、どうしよう? あ、恵介、ちょっと待ってろ。どうした? 麻亜耶?」
「虎康……あたし、アイツを引きつけてくる。だから……その間に虎康は逃げて」
「――っ! 何を言ってるんだ? 麻亜耶! お前の逃げる所はどこにも無いんだぞ!」
「うん、わかってる。だから……」
麻亜耶が虎康の襟首へと手を伸ばす。
そして、そのまま虎康の背中に両腕をまわし、ぎゅっと抱きついてくる。
この灰色の世界には似つかわしくない、儚くも甘い香り――。
麻亜耶は虎康の頬にキスをしていた。それは一瞬の出来事だった。頬に柔らかな潤いが残っていた――が、それだけでは無かった。
「麻……」
名前を呼ぼうにも、もう彼女は目の前にいなかった。頬に手を触れると涙で濡れていた。それは、虎康のではなく彼女の――。
「バイバイ」
手を振って座席から飛び降りると青い魔女っ娘、麻亜耶は振り返ることなく走り去った。
車から少し離れた所で麻亜耶は杖を空に振りかざすと、杖から白い光が力強くほとばしり――、
彼女は一瞬でより離れた場所へと、遠ざかっていた。
それは見る見るうちに点となり、それとは反対に敵と呼んでいるその姿が顕になっていく。
虎康は半ば呆然と、彼女が視界から消えるまで一点を見つめていた。
彼女はずっと地上で一人。
―― うっさい、この弱虫、虎康! 女の子の想い踏みにじるな! ――
―― 出会ってからの時間なんて関係ないの! あたしはこの瞬間、今も虎康のことが好き! ――
虎康は涙の意味を頭の中で理解していたつもりだ。
……麻亜耶。