秘密主義者は今日も
親の転勤で県外の高校に行き、一人の顔も知らない所へと放り込まれ、結構大変な生活を強いられたのではないのだろうか由来は、原因はよく知らないにしろ、またこの地域へと舞い戻り、この高校へと転入を果たしてきた。由来を知らない周りの生徒達は、高校での珍しい転校生に胸躍らせ、しかもあんな美少女ときたら放っておくわけにもいかないだろう。彼女にはきっとすぐに友達ができたと思う。中学の時だって、そうだった。それに、今思えばあっちの生活だってそんなに苦労しなかったのかもしれない。私は内心自嘲した。自分がダメな人間すぎてしまうと、周りもそうなのではないのかと勝手に思ってしまうのだ。なぜ、そんなにうまくいくのか分らない。どうやったら円滑にいくのか、スムーズに交流が持てるのかも分からない。私のプライドが、それをさせないのは勿論分っているけれど、もう私は１７歳なのだ。今更そう簡単に変えられはしない。
中学の頃ぐらいになりだすと人の性格というのは大いに違いが現れてくる。いじめも、悪口もこの頃増えだした。私は大体の人間と接触はあるものの、この性格のため誰とも長く付き合ったり一緒にいることはなかった。長くいればいるほど、必ずその人との仲は崩れた。短時間でさえも、私の悪口が言われていることだって、人づてに聞いたりこっそり聞いたり、私にわざと聞かせたりするものがあったので流石に馬鹿でも理解した。
実際に、いじめられたこともあるのだ。靴に砂を入れられたり、机に変な落書きをされたりと。私はあんまり変化を見せるとまた面倒になるのではないかと思い、無視を試みると暫く続いた悪戯はぱったりと飽きてしまったかのように収まった。その時は自分の対処の仕方がよかったものの、周りからどれだけ嫌われているのか身に染みた気がする。そういえば、あのときのいじめが終わった頃、調度由来と話すようになった気がする。彼女は中学生になって転校してきたばかりだった。私の周りの嫌われようも気にせず、あの笑顔で私に近づいてきた。彼女のあの不思議な性格に私の悪いところは通用しないようで、いつの間にか何学期か一緒にいた。転校の理由は親の事情と聞いているが本当のところは誰も知らない気がする。彼女は友達が多い割にミステリアスな部分が何度も窺えた。家庭の事や、交友関係についても深くは語らず、関わりもしなかった。だけど、彼女から離れていく人間はなぜか少なかった。何も明かさず、拒むことさえあるというのに、まるで引き寄せられるかのように人は増えていった。
私も、そんな人間の一人なのだろうか。一度も、彼女から離れようとは思わなかった。私がそんなことを思うのは珍しいことで、だったらこのままいればいいと思うのだろうが、そういう訳にもいかなかった。周りの人間が連れて行ってしまったからという、なんとも寂しい理由で、私たちはそれから少しずつ疎遠となった。そのことについて由来は軽い謝罪とたまに私のところに訪れるということで仲は収まったが。私はそれからというもの、居心地のいい交友関係も居場所もなくなってしまった。自分から手に入れなければいけないものだと分かっていても、由来の傍に行くことはまるで出来ない気がした。
ただ、彼女の存在だけが、私たちの仲を取り繕ってくれていたんだと、今の私は思う。決して、私の性格や、彼女と私の何等かの相性のよさで導かれたのではない。
全ては、由来のせいなのだ。