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１８．

　『作戦開始』
　リーン・カサブランカが告げると同時に、ミストルティンの艦隊から、
アンテナ型の輻射装置が展開された。
遙か遠く数十キロ向こうにいる変異体群にむかって、輻射装置から
イナーシャルキャンセラー効果を持つ、不可視の波形レーザーが発射された。
　照射。目標に到達。
効果はあったようで、目前に迫った変異体群の機動がピタリと止まった。
　リミテッドテン達の眼球上に表示されたARインフォメーションには、
変異体群の巡航速度がゼロ近くにまで減殺されたことが示されていた。
　『作戦を第二段階に移す。第三、第四艦隊攻撃開始。
<ガーベラ８>群を前方に引きつけ包囲殲滅陣形を作る』
　一同の側に展開していた艦隊と遊撃部隊が一斉に動き出した。
<アクエリアス>を装備したマジェスター部隊と、UG-MAS隊が先陣を
切り、変異体群へとまっしぐらに飛来していく。
　戦端を切ったマジェスター部隊のEVB−ウェポンによる光波が、
変異体群の一角に穴を開けた。
　素粒子レベルにまで解体された変異体が光の粒子と化し、
宇宙の暗闇を照らしあげた。
　その時だった。
変異体の一部が群れから飛び出し、こちらから見て左翼の方向へと
移動をはじめた。速度を減殺されたにも関わらず、移動速度は既に
光速度の三パーセントにまで達している。あっという間に群れは、
彼方の向こうへと消え去っていった。

　それに異変を感じたヒューケインが、眼前にレーダーマップを展開した。
何かを探すように彼は、マップ上を指でなぞり――
　「おいおい。…なんで――」
　戦闘宙域から数百キロ離れた地点。
IFF(敵味方識別装置)が示していたのは常備軍の巡洋艦だった。
　このご時世、対A処置を施されていない装備は皆無とは言え、
殆ど通常戦力しか持たない統合軍の常備部隊が何故こんな所に――？
彼らには、本部から事前の退避勧告が届いて居なかったのか。
それとも――
　作戦開始遅延を良しとしなかった索敵部隊の士官が、あえて
作戦本部に報告を寄せなかったのか。だとしたら、あるまじき怠慢だ。
　「早速、面倒ごとかよ…」
聞こえない声で、ヒューケインは独りごちた。
　最早、やるべきことは決まっていた。
　「L小隊より、HQへ。常備軍の巡洋艦に、変異体群の一部が向かった。
我々は、彼らの救援と支援を行う。コール！」
　リーン三佐には、事前に救援を優先すると示し合わせてある。
ヒューケインの提言に本部(HQ)が寄越した答えは――
　『HQ了解。L(リミテッド）小隊の、救援活動を許可する』
　「了解。提言受け入れ感謝する。て、わけだ。いくぞ皆さん方！」
漆黒の<アクエリアス>を身にまとったヒューケインが身を翻し、
件の巡洋艦へ向かうべく舵を切った。リーダーである彼の命令に
『了解』と一同は返じ、その後に続いた。