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ミムロ コトナリ
ミムロ コトナリ
novelistID. 12426
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マジェスティック・ガール.#1(15節~21節)

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当分は出撃停止だと伺っていましたが」
 「あぁ、そうだったなぁ。サンクス、栞ー」
 そこで、すぃーと、野球ボール大になる球状の構造体が
ミミリの脇を通り抜け、眼前で停まった。
ミミリは、それを見て不思議そうに首を傾げ、尋ねてみた。
 「あのぅ、所でこれはなんでしょう?」
 質問にヒューケインが答えた。
 「ああー、学園新聞部の自律機動カメラだよ。こいつが俺達の
活躍をバッチリ、ガッチリ記録してくれるってわけさ。
リミテッドテンは、政府の広告塔。マジェスタ―の活躍を
国民に喧伝するためのな。
『アクトゥスゥの恐怖に怯える人々に、勇気と希望を振り
まく救世主、リミテッドテン』。いわば、俺達はヒーローなのさ。
俗にいう、アイドル<偶像>って奴だな」
 ヒューケインの解説を補足するように、凛が続いた。
 「そうして我々は、知名度を活かしてタレントとして
メディアに出演したり、企業の販促の為、CMにも協力する。
リミテッドテンは『キャラクター』として、経済効果を生む。
本業以外にも、そうして社会に貢献しているのさ。
アクトゥスゥという恐怖を傍らに置きながらも人間は日々を送り
生活しなければならない。先立つモノは必要だからな」
 「『地獄の沙汰もカネ次第』。というわけさ。
金がなきゃヒトもモノも動かない。
俺たちマジェスターが戦うのは、恒常的な日常を維持する為。
それを見越してのタレント商売ってわけだねー」

 ミミリは、説明に意を得たようで、
 「へぇー。なるほど納得な、合理的なシステムですね」
 「だよな。このシステムを提唱立案したのはフィラなんだ。
そういう面でも、あの人は”やり手”なのさ。
なんでも、ミミリちゃんがリミテッドテン入りした暁には、
ツツジと二人で組ませて、双子のアイドルユニットとして
歌手デビューさせようとか言う話も出ているらしいぜ。
二人とも、カワイイからなー」 
 ミミリは、その事実を聞いて、かつて無いほど驚愕の表情を見せた。
おなじく、ツツジも。
 「ええッ、私たちがですか!?」
 「マジで!?聞いてないんですけど!歌って踊れる
アイドルとか…。うわぁ、やだぁ。恥ずかしいよぉー…」
 ツツジは、本気で困ったといった様子で顔を赤らめた。
普通であることを望む、常識人である彼女には、この件は
かなり刺激が強すぎて、抵抗があるのかもしれない。
ましてや大勢の人前に出てパフォーマンスを行うアイドル歌手など、
以てのほか。なにをかいわんやである。
 「ハハハ。そういう企画が出ているってだけだよ。
ミミリがリミテッドテンにならなきゃ成立しないし、
なによりお流れになる可能性だってある。
ま、安心しろってツツジ」
カラカラと笑うヒューケイン。
 「そうなることを願います。マジで、切実に…」
がっくりと項垂れるツツジだった。

 高速艇の眼前までやってきた所で、先頭を切っていたヒューケインが
くるりと一同に向き直った。
そして、大仰に両手を広げ、芝居がかった口調でこう言った。
 「さぁて、お嬢さん(フロイライン)がた。お待ちかねのチークタイムだ。
軽やかに、勇壮に、華麗に、颯爽と、ダンスホールへ繰り出すとしようか」
 出撃前の縁担ぎと景気づけ。そして、メディア向けに
こうしたパフォーマンスを行うのがヒューケインの習い性だった。が、
 「まぁっ」
栞が口元を押さえ、頬を赤らめた。
 「娼婦(フロイライン)だと…。ふん、相変わらず下品な奴だ」
 凛に言葉の意味を曲解されて、「ちょッ、ちげぇっ…!?」と狼狽えて
いるヒューケインを尻目に、ミミリはツツジに尋ねた。
 「なんか、ヒューケインさんが場を仕切っているような気が
するんですけど。どういう事なの、ツツじー?」
 「ああー。あの人が、リミテッドテンのリーダーだからよ」
 リミテッドテンの公式的な序列では、No.2であるヒューケインだが、
その実プランタリアの精鋭達を束ねる立場にある。
 「ええっ!?そうなんですか。へぇぇー、意外です…」
 「プラタナスの花言葉は、『天稟・天才・非凡』。マジェスタ―の
人格と性格は自分の属性を表す品種の花言葉を基幹として
いるのは知っているでしょう。アンタの場合だったら――…」
 「フリージアの花言葉は、『純情・純潔・慈愛・無邪気・親愛の情』」
 「そ。つまりは、純粋無垢な、ド天然ってことよね」
 「あぅあっ、ヒドイですッ!」
 「あはは、ごめん。ヒューケインは名前の通り天才なのよ。
戦略・戦術・兵法に通じた、典型的な指揮官タイプ。おまけに戦闘も
こなせるね。ちなみにああ見えて、実は科学者なのよ。
サンフラワーの助手も兼ねているし、<M研>のラボに研究室も
持っているんだってさ」
 「へぇー、二重に驚きです。意外だなぁ、あんなチャライのに。
大丈夫なんですか、<M研>の科学者の選定基準って」
 「あのね…。聞こえてるぜぇー、ミミリちゃん…」
恨めしそうに言うヒューケインだった。