小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
ミムロ コトナリ
ミムロ コトナリ
novelistID. 12426
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

マジェスティック・ガール.#1(15節~21節)

INDEX|1ページ/14ページ|

次のページ
 

15.


 
 サンフラワーの命令を受けた一同は、都庁舎ビル<アグリカル
チュア>が所在するプランタリア首都――第十都市<マルクト>を出立。
 リミテッドテンの面々とミミリは、AQUA-Sを装着してから、
プランタリアのコロニー都市の一つ。
宇宙港が設けられた第五都市<ゲブラー>へと向かっていた。
 プランタリアじゅうに第二次厳戒態勢が敷かれたあと、
街は静寂に包まれていた。
 あらゆる商業活動が停止し、喧騒に包まれていた商業地区や
繁華街に軒を連ねる店舗や百貨店も営業を中止し、
シャッターを降ろしていた。
 街のあちこちは、突然の休業に帰路を急ぐビジネスマンや
人々でごった返し、バス、エクスプレス、タクシー、エアバス
などの交通機関に行列の山を作っている。
それを見て、今は非日常なのだな、とミミリは感じた。

 「なんか、すいません」
無重力移動回廊を渡っている最中、ミミリがぽつりと口を開いた。
 「あー、なんでさ?」
 ヒューケインが、事も無げに返した。
 「サンフラワー・・・冶月フィラの命令とは言え、私も一緒に同伴する
ことになってしまって」
 ミミリは、先刻の出来事を思い出していた。

 ***

 身を翻して、ヒューケインや凛を始めとする、リミテッドテンの
面々が、<展望台>を後にしようとした時だった。
 「あー、そうそう。ミミリさん。貴方も彼らに同行なさい」
 「私も…ですか?」
ミミリは、不思議そうに首をかしげた。
 「後ろで見ているだけでいいわ。実地見学だと思ってくれればね」
 「はぁ」
 「ヒューケイン、護衛お願いしてもいいかしら。
話はすでに、<ミストルティン>の『リーン・カサブランカ三佐』に
通してあるから」
 ヒューケインは肩をすくめ、
 「既に根回し済みってわけね。オーケー、それなら
話はシンプルだ。どうせ、拒否権ないんでしょう?」
 「わかってるじゃない。物分かりがいい子は好きよ。
さっきの不敬罪の告訴は取り下げて置いてあげるわ(ニコ☆)」
 「つか、本気だったのかよ!いつ裁判所に申し出たんだ!?
仕事早いな、アンタ!」
 「うみーみー、まぁねー。さぁさぁ、切り切り働いてらっしゃい。
リミテッドテンの活躍、期待してるわねー」
と、いつもの気だるい間延びした調子で、
サンフラワーは一同を送り出した。

       ***

 「ただ同行して来いってわけじゃないですよね。
どういう意図があるんでしょう?」
 普通に考えて、あのサンフラワーこと冶月フィラが
ただの見学目的で自分を同伴させる訳がない。
何か別の目的があるのでは――と、ミミリは勘ぐっていた。
 「さぁな。サンフラワーに後で聞いてみればいいんじゃねぇか?」
そう口にするヒューケインは、何も知らないといった素振りだった。
と、そこで移動回廊が途切れた。 
 移動回廊を渡ると、連邦軍の基地エリアに出た。
 <ゲブラー>は、軍の基地施設や宇宙港が所在する都市だった。
この都市の一画には、GUC連邦統合軍の特殊部隊である、
対A作戦課実働部隊<ミストルティン>の本部基地が置かれている。
 基地の下層階は、宇宙港に直接繋がっている。
宇宙港は半径三キロの幅を持つ円筒トンネル状の空間になっており、
外敵の侵入と攻撃を防ぐため、トンネル部分は一枚1.87メートル
からなる特殊硬質合金で形成された26枚の分厚い隔壁層で
覆われている。
 宇宙港の軍港エリアは、ゲートで境界を区切られており、
その境界内には、軍または管理事務次官からの認証を得た
人間しか立ち入りを許されない。
 加えて、ゲートは生体認証制になっており、データバンクに登録さ
れた遺伝子情報が一致した人間にのみ通過が許可される。
その括りで言えば、ミミリ達はその条件をクリアしていた。
 軍港のエントランスゲートをくぐった先。
リミテッドテンの一同は、そこに会していた。

 「よぉ、ご両人。お早いお着きだな」
ヒューケインは、手を上げて高速艇の前に佇んでいる二人組の
少年少女に声をかけた。
 少年のほう――
リミテッドテンNo.6、エンリオ・G(グラジオラス)・サフランが答えた。
 エンリオは、オレンジ色の髪を刈りあげて丸めた
驕奢なイタリアンボーイと言う風情の、ガタイの良い青年だった。
 「今来たばっかだよ。なんだぁ、そんなに美少女連れ立って。
ハーレム状態じゃないか。羨ましい奴め」
 「ヘヘッ、だろぉー?一人熟女がいるけどな」
 「おいッ…」
熟女呼ばわりされた凛が、低い声で凄んだ。
 二人組の片割れ、少女の方。その姿を見て、ミミリは顔を綻ばせた。
 「ナズナ!」
 「ミミリ!?」
 エンリオと一緒にいた少女は、ミミリがガーデン808にいた頃
世話を焼いてくれた姉貴分、ナズナ・Z・スイートピーだった。
リミテッドテンNo.8。それが今のナズナの肩書きであった。
 ミミリは、ナズナに駆け寄り、その胸に飛び込んだ。
二人は抱き合いもつれ合って、くるりと一回転。
ミミリは胸に埋めた顔をあげて、
 「お久しぶりです」
 「ええ、本当に。一年間行方知らずだって聞いたけど、無事で
よかったわ。でも、なんで貴方がここに?」
 「えへへ。サンフラワーの命令で、同行しろって言われまして」
 「ミミリを…?ヒューケインさん、いいんですか?」
ナズナは訝しんで、不安げな表情をヒューケインに向けた。
 ヒューケインは眉間に皺を寄せ、頭をガシガシと掻き、
 「よかねぇよー。サンフラワーが連れて行けって、
上司パワーでゴリ押ししてさぁー」
 「されたんですよね…?」
冷淡な口調で、ジト目になって言うナズナ。
 「はい、そぅです…。面目ありません。けど、フィラ自身からの命令
でもあるんだよ。何か考えがあってのことなのさ」
 「そうですか…。分かりました。ミミリ、しっかり守ってあげるから
安心してね」
 「はい。すいませんナズナ、それに皆さん。よろしくお願いします」
 ミミリは、一同に向かって深々と頭を下げた。
リミテッドテンの面々は、「こちらこそ」「任せておきな」と応え、
快く引き受けてくれたようだった。
    
 軍港の埠頭エリアには大小様々な軍用高速艇や艦船が
接舷されており、上はエアバイクや自律機動工作マシンが往来し、
下では物資を詰め込んだトレーラーが右往左往している。
 ドッグの整備エリアでは、兵士や整備兵達が忙しなく行き交う姿が
見て取れた。
 ヒューケインが、集まった面子をざっと見渡した。
 「さて、これで集まったな」
 メンバーは六人。
ここに居ないリミテッドテンのメンバーは三名。
No.5<エリカ・シュンシエン>とNo.7<館葵深冬>は軍に『出張中』。
<ミストルティン>の巡視部隊に派遣され、アルマーク星系の外で
<ガーベラ8>監視任務に就いている。
 「あー…、鬼百合白銀(オニユリ シロガネ)は?」
 鬼百合白銀。後期二年生。リミテッドテンNo.4。
白銀の長髪を持つ、長身の美丈夫と言った風情の青年。
なかなか人前に姿を見せない人物としても、公に知られていた。
 金雀枝栞が粛々と告げた。
 「彼はまだ、新調された<アクエリアス>が調整中です。