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ミムロ コトナリ
ミムロ コトナリ
novelistID. 12426
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マジェスティック・ガール.#1(15節~21節)

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変異体の白い仮面に、二本のレイピアが突きたてられる。
 顔面を串刺しにされた変異体は、たちまち形象崩壊を起こし、
赤い液体を撒き散らしながら爆ぜ、光の粒子となって消えた。

 ――り…だね。
(え…?)

確かに聞こえた。
淡く輝く光の粒子が舞い散る中、女性の声が聞こえた。

(なんだろう。とても、なつかしくて…。優しい…あの日の)

 と、同時にキーンと耳鳴りが耳朶を打ち、頭の中から
響くような、突き刺す痛みが襲い掛かってきた。
 神経をピリピリと焼くような頭痛に、ミミリは反射的に
頭を押えようとして、レイピアを手からこぼしてしまった。
 「ミミリ!」
叫んだヒューケインの声で気が付き、我を取り戻したその時。
 残った変異体の内二体が、隙をさらしたミミリの喉もとに
喰らいつこうと飛び掛ってきた。
 瞬間。判断。回避。無理!防御は――
(パリィング…!だめ!間に合わな…)
 ミミリの横を、栞が放った<ソード>が駆け抜けた。
 <ソード>が光波を放ち、飛び掛ってきた二体を撃滅。
 その後を追い、ヒューケインが疾駆、跳躍。
最後に残った二体を裁断剣で切り捨てた。
 振り返るヒューケイン。
「大丈夫か?」
「あ…。は…はい」
ミミリは腰砕けになって、その場にへなへなと膝をついた。


 ――周囲に変異体反応無し。撃滅完了。一先ずの安全は確保。
 ヒューケインが、ヘルメットの耳元に手を当てた。
<アクエリアス>のフェイスマスクがオープンし、髪と素顔があらわになった。
「ビューティホーだ、ミミリ。見事だったぜー。なぁ、栞」
「はい。素晴らしいお手前でした。普段とのギャップが中々どうして
素晴らしい相乗効果を生んでいましたわね。天然キャラかと
思いきや、戦闘になると寡黙キャラに様変わり。
通好みの琴線に、ど真ん中ストライクと言った所でしょうか」
何故かうっとりとした恍惚の表情で言う栞。
「そりゃ、褒めてんのか、おまえよぅ・・・。
なんか、別の所で感心してねぇか?」
「あ…あはは。お二人とも、フォローありがとうございました。
体が勝手に動いて、無我夢中だったもので」
「いいえ。所で先程、何か痛みを堪えているようでしたけれど…。
異常はありませんか?大丈夫ですか?」
「はい、すいません。いきなり、頭痛が襲ってきまして。
でも、もうなんともありません」
「そうですか、よかった」と、栞は安堵し、
「では、参りましょうミミリさん。
この艦にいる皆さんを、お助けしなくてはね?」
「はい、金雀枝さん」
目を細めて微笑を浮かべる栞に向かって、ミミリは頷いた。
そして、女性士官に向き直り。
「立てますか?」
 女性士官は、ミミリの問いかけに頷き、立ち上がろうとして
足がカクンと折れた。先ほどの恐怖が未だ抜け切っていないのだろう。
 ミミリは、女性士官に肩を貸し彼女を支えながら連れて行くことにした。
「よし、行くか。ここの現場を仕切ってる責任者と会って、
事情を聞いてから、救助の算段をつけたいしな。いいか?」
 ミミリと栞は、ヒューケインの提案を承諾し、女性士官を
連れて艦の奥へと歩を進めた。