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CROSS 第12話 『救出』

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 2匹のガーゴイルに連れ去られた妖夢は、ある石造りの建物の部屋に、天井の穴から2フロア分下へ放り落とされる形で入れられた。妖夢が牢屋の中に尻もちをついて落ちた途端、その天井の穴は、特殊なバリアに塞がれてしまった……。
 連行されている途中で気絶させられてしまっていた妖夢は、1時間ほどしてから目を覚ますとすぐに起き上がり、牢屋の鉄格子に向かって刀を構えて、その鉄格子に斬りかかった。もちろん、鉄格子を妖怪が鍛えたらしい御自慢の刀で斬るため
だ。

   バァァァン!!!

 しかし、上の天井の穴だけでなく鉄格子の周りにも特殊なバリアが張られており、妖夢は勢いよく跳ね返され、また尻もちをついた……。
 彼女の霊魂も跳ね返されている。よく見ると、鉄格子のすぐ下に、特殊なバリアを張る装置が設置されていた。その装置には、大日本帝国連邦軍の物であることを示す文字と日の丸が刻まれていた……。
「帝国連邦製の特殊バリアとは、やっかいですね」
彼女はそう呟きながら、目の前の特殊バリア装置を睨んだ。
「前は俺たちが使っていたんだけどな」
突然、彼女の後ろで声がした。彼女は素早く振り向き、刀の先を向けた。

「おいおい、俺は悪魔じゃないぜ……」
 そこには、「事務屋」タイプの制服を着た軍人がいた。帝国連邦軍の将校のようだ。怪我は無いようだが、服はとても汚れていた。
「あなたも捕まったんですか?」
その軍人はため息をついた後、
「少し前まではここの看守だったけどな……」
元看守らしいその男はそう言うと、鉄格子の向こうの、吹き抜けを挟んで向かい側にあるここと同じような牢屋を指さした。
「あの牢屋にいるのは、この収容所の所長だったおっさんだぜ」
その牢屋の中には、頭のハゲた中年男性が壊れかけたイスで静かに腰かけていた。
「……オレの他に生き残っているのは、あのおっさんだけだぜ」
元看守は疲れ切っているようだった。
「それで、おまえは誰だ? 民間人か?」
妖夢は特殊ゴーグルを装備していたので、元看守には妖夢が誰なのかわからないようだった。

   チリ−ーーン♪ チリーーーン♪

 そのとき、鈴が鳴る音が聞こえてきた。静かな鈴の音だったが、その音は不気味に響き渡っていた。
「ちくしょう! こっちに来るんじゃねーぞ!」
先ほどまで落ち着いていた元看守の男は、鈴の音が聞こえてきた途端、狼狽え始めた……。妖夢はそのワケがわからず、鈴の音がするほうを、特殊バリアに触れないようにしながら見てみた。