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月の子守唄

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もし、本当に世界に私以外誰もいなくなっちゃったら。
ふと、そんなことを考えた。
困るだろうな。何食べて生きていけばいいんだろう。寒くてもヒーターを点ける電力を動かしてくれる人はいないわけだし、風邪をひいて倒れても助けてくれる人はいない。きっと私も早死にして、すぐに地球は無人になるんだろうな。
そこまで想像をめぐらせて、「人がいなくなってさびしいと思う私」が出てこないことに気付いた。
普段の私なら、周りに人がいなければさびしくて死んでしまうだろう。
いや、違うか。
私は笑っていた。笑顔ではなく、たぶん、嘲笑という形で。
私はさびしいんじゃない。不安なんだ。こわいんだ。
一人ぼっちだと見なされることがこわい。友だちのいないやつだと思われるのがこわい。
笑っていた。止まらなかった。体が、小刻みに震える。
世界中で一人ぼっちになることより、集団の中に一人でいることの方がこわいんだ。
へんなの。おかしくてたまらない。
体を震わせていた笑いは、やがてこらえきれずに声を伴って暗闇を震わせた。
どうしてだろう。笑っているはずなのに、苦しくてたまらない。
胃の中のものを吐き出す寸前の、あのもどかしさによく似てる。
「どうして」
声に出ていた。誰かを責めているみたいに強張った自分の声に、少し怯んだ。
どうして。そのあとに続く言葉は、見つからない。
悩みがない?羨ましい?
じゃあ、今、こうして震えてる私って、なに?
世界中で一人きりになることより、大勢の中で孤立することの方がこわい私ってなんなの?
友だちといるときは楽しい。嘘じゃない。
でも、いつも周りを気にしているのも、嘘じゃない。
どのタイミングで笑えばいいか、目を合わせてもらえないのはどんなときか、どんな立ち回りをすればみんなが私を見ていてくれるか、考えずにいられないのも、本当。

作品名:月の子守唄 作家名:やしろ