月の子守唄
『いいよね、恵は。悩みがなくてさ』
こんなことを言われたのは別に初めてのことじゃない。むしろ平均より多く言われてきたような気がする。
それはたぶん、私がいつもバカみたいに笑ってるからだろう。自覚はある。
人に対して本気で怒ったりしないし、傷ついたからといって泣いたりしない。
友だちのジョークがどんなにへたくそでも、たとえそれが私をバカにしたものだったとしても、ただへらへらと笑ってきた。
「ヘンなの」
声に出してみた。いつもそうしているみたいに、笑ってみたかった。
「眠れないや」
家族はもうみんな寝てしまったようで、耳をすませても何も聞こえない。
傍らに置いたデジタル時計は午前2時を指している。明日も学校があることを考えると、いい加減寝てなきゃいけない時間なんだけどな。
目をつぶってみてもたいして変わらない暗闇に飽きて、すぐにまた目を開く。
このまま眠れなかったら、たぶん明日はでかいクマ作って登校。友だちはみんな、びっくりするだろうな。それとも気付かないのかな。
徹夜でゲームしちゃったんだ。ラスボスがなかなか手強くて。
私が笑ってそう言えば、みんな欠片も疑うことなく信じるだろう。
ホントに、恵はのんきなんだから。きっと、そう言って笑うんだろう。
『今まで一度も本気で思い悩んだことありませんって感じの、幸せそうな顔してる。ホント、羨ましいよ』
「私、そう見えてるの?」
言った本人はここにはいないのに、口に出していた。
私しかいないこの部屋に、返してくれる宛てなんていない。そんなこと百も承知のはずなのに、まるで世界中に私以外誰もいなくなってしまたかのようなただっ広さを感じた。
こんなことを言われたのは別に初めてのことじゃない。むしろ平均より多く言われてきたような気がする。
それはたぶん、私がいつもバカみたいに笑ってるからだろう。自覚はある。
人に対して本気で怒ったりしないし、傷ついたからといって泣いたりしない。
友だちのジョークがどんなにへたくそでも、たとえそれが私をバカにしたものだったとしても、ただへらへらと笑ってきた。
「ヘンなの」
声に出してみた。いつもそうしているみたいに、笑ってみたかった。
「眠れないや」
家族はもうみんな寝てしまったようで、耳をすませても何も聞こえない。
傍らに置いたデジタル時計は午前2時を指している。明日も学校があることを考えると、いい加減寝てなきゃいけない時間なんだけどな。
目をつぶってみてもたいして変わらない暗闇に飽きて、すぐにまた目を開く。
このまま眠れなかったら、たぶん明日はでかいクマ作って登校。友だちはみんな、びっくりするだろうな。それとも気付かないのかな。
徹夜でゲームしちゃったんだ。ラスボスがなかなか手強くて。
私が笑ってそう言えば、みんな欠片も疑うことなく信じるだろう。
ホントに、恵はのんきなんだから。きっと、そう言って笑うんだろう。
『今まで一度も本気で思い悩んだことありませんって感じの、幸せそうな顔してる。ホント、羨ましいよ』
「私、そう見えてるの?」
言った本人はここにはいないのに、口に出していた。
私しかいないこの部屋に、返してくれる宛てなんていない。そんなこと百も承知のはずなのに、まるで世界中に私以外誰もいなくなってしまたかのようなただっ広さを感じた。