看護師の不思議な体験談 其の十六
「あー、あの猫。2、3日見かけないなと思ったら、いつの間にか帰ってきてるんですよね。あちこちに縄張りがあるんじゃないですか。」
「私、一時、赤い首輪つけてるの見ましたけど、すぐはずれてました。たぶん患者さんがつけたんでしょうけど。取れたのか、取ったのか。」
「首輪つけられて喜ぶ猫じゃないでしょ、あれは。」
「うちの隠れた名物みたいになったるよね。」
みんな、なんだかんだ言って、あの黒猫の話になると意外に盛り上がる。
「はい、うるさい。仕事してちょうだい。」
夕方の師長さんはピリピリムード出しまくりだ。
そんな穏やかな雰囲気のまま、準夜勤務帯では、特に変わった出来事もなく無事定時に仕事を終えることができた。その代わり、変わった出来事は勤務終了してからだった。
作品名:看護師の不思議な体験談 其の十六 作家名:柊 恵二