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しっぽ物語 5.眠りの森の美女

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 アトランティックシティを安ピカの街と行ったのは誰だったか忘れたが、西海岸の鉄火な空気と、東部貴族の田舎臭さを一身に引き受けたこの街の安っぽさ、両方の悪い部分ばかり取り入れてしまっている男の姿を思い出し、顔を顰める。
「休暇の予定は明後日までだったな。電話して、診断書を持ってくるように伝えろ」
「分かりました」
 男はメモすら取らなかった。こいつはここで止まりだな、と頭の中でチェックを入れる。
「クラップのブースに昇格させたばかりだっていうのに、使えない」
「でも、あの腕は」
「リノ仕込み?」
 それがどうした、との呟きは仏頂面の向こうに押し込んでおく。リノなんて大した街じゃない。行ったことはなくても、あの男を見ていれば分かる。
「ホテルの男って、海老グラタンに海老が二つしか入ってなかったってクレームをつけてた奴か」
「そうです」
「今度は何だ」
「ブラックジャックのディーラーにケチをつけてます。ホールカードに細工してるんじゃないかって」
「知ったかぶりのド素人め」
 受付嬢は俯いたまま。平日で観光シーズンも過ぎ去り、客が大挙しているわけではない。そもそもこのフロアは受け持ちですらなかったが、Cは足を伸ばして胸倉を掴み、化粧の濃い横面を思い切りひっぱたいてやりたい衝動に駆られた。栗色の髪で人好きのしそうな顔立ちだが、大方モニターでソリティアでもやっているのだろう。幾ら顔がいいからって、あんな役立たず。自分がオーナーなら、Dとセットで今すぐクビにしてやる。
通りがかりのベルボーイが頭を下げる。チップを誤魔化していたのを庇ってやったことをまだ恩に着ているらしいし、またそう思わせるよう、Cはあえて無視した。
「初めての客だったな。他のホテルに照会したか」
「いえ、まだ」
 ポスト・カリフォルニア料理と銘打ったレストランは、昼近くにも関わらず人の入りが悪い。埃を被ったディスプレイと、この前厨房を覗いた時眼にした温野菜の色身の悪さは、見事に重なって見える。一度L自身に食べさせる必要があるのではと常々思っていたが、今度会う機会に、さりげなく切り出してみるのもいいかもしれない。とにかく自分がオーナーだったら、あんな店さっさと契約を切って、オリエンタル料理の店でも入れさせるに違いない。
「だったら、さっさと連絡を入れろ」