看護師の不思議な体験談 其の十五
まあ、難しいことは上層部の話なので、とりあえずは目の前にある課題を…。
「Yさん、行ったことないでしょ。行っておいで。」
師長の決断の早さったら、いつも素敵。
「はい!何をしたらいいんでしょうか。」
新人は目をキラキラさせている。
(解剖の意味、分かってるよね…?)
「あと、Nさん行って。」
師長は会議の資料をトントンとそろえながら、冷たい矢を放った。
「えっ、何で私…?」
「Nさん、Yさんのプリセプター(新人指導者)でしょ。一緒に行って。」
「うっ…。」
みんなの同情の目がNさんに向けられる。
「Nさん、午後の仕事引き継ぎますから。が、頑張って!」
心を込めて言ったつもりだったのだけど。
「杉川、目が笑ってる。」
「すんません、プッ。」
「はぁ…。Yさん、おいで…。」
「はい!」
違い過ぎる2人のテンション。申し訳ないけど、自分ではないことにホッとしてしまった。
作品名:看護師の不思議な体験談 其の十五 作家名:柊 恵二