看護師の不思議な体験談 其の十五
そんな穏やかな午後。 師長が会議から帰ってきた。
「今日、解剖の担当日だったの忘れてた。」
それを聞いたスタッフ全員が、ビクッとする。
(指名されませんように…。)
全員の心の声が聞こえてきた。
「誰か今から手が空く人。」
シンと静かになるナースステーション。
解剖の担当とは、医師による遺体解剖の立会いの日のことである。
原因がはっきりしない病死の場合、家族の同意のもと、遺体解剖することになる。滅多にないのだけれど、忘れた頃にやってくる。
ある程度の規模以上の総合病院となると、一定の遺体解剖件数が必要となる。なんだか、矛盾する話だけれど、病院的に件数は必要だけど、国レベルでいうと遺体解剖の件数は減らさなければならない。うーん…。遺体解剖の件数削減のために、AIという死後画像診断を取り入れる方向なのだけれど、生きている患者様が利用する検査機(CTなど)に遺体を乗せるのは嫌だという医師や患者様の言葉。どうすりゃいいんだろう。
作品名:看護師の不思議な体験談 其の十五 作家名:柊 恵二