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ミムロ コトナリ
ミムロ コトナリ
novelistID. 12426
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マジェスティック・ガールEp:1 まとめ

INDEX|64ページ/80ページ|

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 ミミリは、アクエリアスの腰部装甲スリットから、レイピアタイプの近接型EVB兵器を引き抜き両手に構える。
 前方の変異体をきっと見据え、床を蹴り宙を舞い飛んだ。迫る黒い異形!
 標的とラインが交差する直前で、体を縦軸に捻り回転(アクセル)。先頭を駆けて跳んで来た二体を宙で薙ぎ払い、着地の態勢を整える。
 軽やかに着地。間髪いれず、疾駆。
 黒い影がわき目に映った。
 『いつのまに来たのか?』と考えるよりも早く、体が動いていた。
 下から上へ掬うようにレイピアを振り上げる。こちらの脇をすり抜けようとして来た一体を切り上げ、撃滅。
 ふっ、と。正面を向いたミミリの目と鼻の先に、真っ白な面が映り込んだ。
 ――コンマ秒の時間差での不意打ち。
 変異体がシャチの口を開いて、ミミリを頭から飲み込もうと食らいかかってきた。
 ――時が止まったかのようゆっくりと経過する。
 常人ならば、この不意打ちで”終わっていた”に違いない。
 だが、ミミリはマジェスター。その反応速度は常人の比ではない。
 ――ミミリの体を動かしたのは、体に染み付いた『癖』と、加えて『本能』。それに、訓練と反復によって培われた一連の動作だった。
 認識。回避。判断。攻撃。着撃!陶磁器の表面がひび割れる様な音が響いた。変異体の白い仮面と口内に、二本のレイピアが深々と突きたてられる。
 顔面を串刺しにされた変異体は、たちまち形象崩壊を起こし、赤い液体を撒き散らしながら爆ぜ、光の粒子となって霧散した。

 ――り…だね。
(え…?)

 確かに聞こえた。淡く輝く光の粒子が舞い散る中。―――女性の声が。
(なんだろう。とても、なつかしくて…。優しい…あの日の、あの時の―――)
 と、同時にキ―ンと耳鳴りが耳朶を打ち、頭の中を抉るような、突き刺す痛みが襲い掛かってきた。
 頭が…、割れそうだ。
 神経をピリピリと焼くような頭痛に、ミミリは反射的に頭を押えようとして、レイピアを手からこぼしてしまった。
 「ミミリ!」
 叫んだヒューケインの声で気が付き、我を取り戻したその時。残った変異体の内二体が、隙をさらしたミミリの喉もとに喰らいつこうと飛び掛ってきた。
 瞬間。判断。回避。無理!防御は――(パリィング…!だめ!間に合わな…)
 ミミリの横を、鋭いシルエットが駆け抜けた。
 <ソ―ド>が光波を放ち、飛び掛ってきた二体を撃滅。その後を追い、ヒューケインが疾駆、跳躍。最後に残った二体を裁断剣で切り捨て、光の粒子に変えた。
 振り返るヒューケイン。
「大丈夫か?」
「あ…。は…はい」
 緊張が解けたのか。ミミリは腰砕けになって、その場にへなへなと崩れ落ちてしまった。

 ――周囲に変異体反応無し。撃滅完了。一先ずの安全は確保。
 ヒューケインが、ヘルメットの耳元に手を当てた。圧縮空気が開放される音とともに
<アクエリアス>のフェイスマスクがオープンし、隠されていた髪と素顔があらわになった。
「ビュ―ティホ―だ、ミミリ。見事だったぜ―。なぁ、栞」
「はい。素晴らしいお手前でした。普段とのギャップが中々どうして素晴らしい相乗効果を生んでいましたわね。天然キャラかと思いきや、戦闘になると寡黙キャラに様変わり。
通好みの琴線に、ど真ん中ストライクと言った所でしょうか」
 何故かうっとりとした恍惚の表情で言う栞。
「そりゃ、褒めてんのか、おまえよぅ・・・。なんか、別の所で感心してねぇか?」
「あ…あはは。お二人とも、フォロ―ありがとうございました。体が勝手に動いて、無我夢中だったもので」
「いいえ。所で先程、何か痛みを堪えているようでしたけれど…。異常はありませんか?大丈夫ですか?」
「はい、すいません。いきなり、頭痛が襲ってきまして。でも、もうなんともありません」
「そうですか、よかった」と、栞は安堵し、
「では、参りましょうミミリさん。この艦にいる皆さんを、お助けしなくてはね?」
「はい、金雀枝さん」
 目を細めて微笑を浮かべる栞に向かって、ミミリは頷いた。そして、女性士官に向き直り。
「立てますか?」
 女性士官は、ミミリの問いかけに頷き、立ち上がろうとして足がカクンと折れた。先ほどの恐怖が未だ抜け切っていないのだろう。
 ミミリは、女性士官に肩を貸し彼女を支えながら連れて行くことにした。
「よし、行くか。さっさと、ここの現場を仕切ってる責任者と会って、打ち合わせだ。色々と算段をつけたいしな」
 ミミリと栞は頷いて、女性士官を連れて艦の奥へと歩を進めた。