マジェスティック・ガールEp:1 まとめ
トイレの前を通り過ぎようとしたその時。
「「あっ!」」「「ああっ!!」」
用事を済ませた乗務員二人組がトイレの扉を開けて出てきたのだ。
「すいませんっ!」
「悪く思うなよ!」
ミミリとマクレインは、とっさに当身で二人を気絶させた。
これでひと安心。
――と思いきや、そこに別の乗務員が通りかかり現場を目撃されてしまった。
「なにをやっている、おまえら!」
「「!?」」
乗務員が吹いた警告用のホイッスルを合図にして、機内を上に下への大捕物が始りを告げた。
二人は見事な連携で、爆弾が入ったアタッシュケ―スをパスして回しあい、乗務員達から逃げまわった。
もうじき貨物室の扉が見えてこようとしたとき。
「あっ…!!」
やってしまった…!ミミリはパスされたアタッシュケ―スを取りこぼしてしまった。
あろうことか、足がもつれてその場に蹴躓いて、転んでしまったのだ。
あるまじき…、超人であるマジェスターにあるまじきミス。
床に転がるアタッシュケ―ス。
叫んで走るマクレイン。
転んだミミリ目がけて跳びかかる乗務員達。
声にならない叫び声を上げるミミリ。
それと同時に、床に這いつくばったミミリの上に八人の乗務員達が覆いかぶさり、彼女の体の自由を奪い去る。
――身動きできない!
(そんなここまで来て…!そんな……あぁぅ…。ぅえぐっ…こんなことって…!)
タイムリミットは、あと三十秒を切っていた。
終わり。全て終わり…!
絶望を覚悟し、涙に濡れた目を食いしばったその時。
颯爽とアタッシュケ―スの前を横切り、それを拾う人影があった。
――マクレインだった。
マクレインは、アタッシュケ―スを抱えたまま貨物室へ突入。機外に繋がるメンテナンス扉を開け放つ。
減圧を待たず圧力扉を強制解放したため、凄まじい空気の奔流が貨物室内に吹き荒れた。
格納されていた荷物が尽く宇宙へと吸いだされていく。
「うぉおぉぉおおおぉぉぉぉぉ―――――っ!いっけぇぇぇ―――――!!」
それに乗じて、マクレインもアタッシュケ―スを放り投げ、自らも宇宙へと飛び出す。
間髪入れず――爆発。
爆発の衝撃の余波で、シャトルの船体がひしゃげた。機体に亀裂が走る。
ミミリの体がふわりと浮いた。
亀裂の側にいたミミリは、彼女を押さえつけていた乗務員達と一緒に外へと放り出されてしまった。
宇宙へと放り出された時、一瞬だけ、マクレインらしきAQUA―Sの姿を見たような気がした。
二度目の爆発。
衝撃で歪んだエンジンから漏れ出した燃料が引火し、シャトルの右舷が爆ぜ飛ぶ。
その爆破の衝撃の余波を受け、ミミリは初速数千Km/Sの速度で吹き飛ばされた。
不幸中の幸いだったのは、予めAQUA―Sを身につけていたことだろう。
シャトルから遠のく視界の中で、白い船体が爆炎の渦に巻き込まれていく。
すべてが徒労に終わった。
事件解決に傾けた時間も、努力も。
救おうとした人々の命も。
――BAD END――
自分があの時、もっと上手くやれていれば。やれていたのなら…。シャトルに乗り合わせた人達は死なずにすんだ筈だ。
バ―ジル・マクレインには悪いことをしてしまった。彼は生き延び、家族を無事に犯人の手から救い出せたのだろうか。
作品名:マジェスティック・ガールEp:1 まとめ 作家名:ミムロ コトナリ