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ミムロ コトナリ
ミムロ コトナリ
novelistID. 12426
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マジェスティック・ガールEp:1 まとめ

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(それなら、先んじて端末を発見して確保しておけば…)と思った所。
『あ―、そうそう。先に指定された子機をあらかじめ見つけ出すのも無しだ。無論、それもアウトだ。たまに、機内電話に繋げることもあるかな。その時は、急いで出てくれ。つまり、君たちは十五分ごとのスパンで、爆弾の発見もあわせて、端末の捜索もしなくてはならないわけだ。どうだ、”楽しい宝探し”だろう?
以上、この三つを厳守すること。破れば、即”ドカン”だ。ル―ルの抵触は即ちゲ―ムオ―バ―に通じると心得たまえ。ソレ以外は何をしても自由だ。ああ、そうだ。
始めの連絡用の端末は、トイレの後ろに隠してある。早く行かないと乗務員や、他の客に持って行かれてしまうぞ』
 そう言って締めくくり、犯人は電話を切った。
「あわわわ…」
「クソッ!サイコ野郎が。孤立無援な上、相棒は毛も生え揃っていないようなガキ一人ときたもんだ。ますます以て、”本当に最高だぜ”」

 不承不承成り行きでコンビを組んだ二人だったが、捜査を進め、困難を乗り越えるうちに、お互いの間に確かな信頼関係が生まれていた。
 ル―ルに抵触するような場面に遭遇することも多少なりともあった。
 爆弾を捜索して乗務員や乗客に訝しげな目を向けられたり、偶然にもプリペイド携帯を見つけた客ととっ掴み合いになったり。不審な行動を見咎められ危うく通報されそうになり、誤解を解くのにかなり無理のある言い訳をしたりもした。
 時にシャトルに乗り合わせていた犯人グル―プの一味の妨害に遭い、バトルに突入したこともあった。
 二人はそうしたピンチを知恵とアイディアを出し合い、見事な連携と機転を発揮し乗り越えていった。
 ――とうとう、最後の爆弾を解体する所までやってきた。
 爆弾の仕組みは実に単純。信管からの信号を受けて起爆するというシンプルな構造だった。
 爆弾と信管をつなぐ二本ある内の一本を切断すれば、解体できるという仕組みだ。
「これが九個目の爆弾。…最後の爆弾だ。慎重にやれよ。いいな、慎重にだぞ」
「わかってますよぉ―…。もう、信用してませんよね私のこと」
「ああ、すまない。今までのことを思い出すとな。こういう時に限って
妙ちきりんなトラブルばっかりだったじゃないか、特に嬢ちゃんの時だけよ。
まぁ、いい。早くやってくれ。犯人からの指示が無かったら俺がやるんだがな」
「はいはい。じゃぁ、いきますね」
「ああ…」
 二人は、固唾を飲んだ。
ペンチを握るミミリの手元が緊張に震えた。

         パチリ。

 一瞬の静寂。一秒が何十分にも感じられた。
 …――なにも、起きない。
「…やった……やりました。解除成功です!」 
「イヤッホォ――――ゥ!やりやがった、流石だぜ嬢ちゃん。お前は運命の女神様だ!ハハハハハ」
 最後の爆弾を解除した二人は、嬉しさのあまり、思わず互いにハグしあった。
「あははははは。痛い、お髭痛いですよぉ〜、バ―ジルさん。あは……あははは」

 最後のほうでは、阿吽の呼吸で互いのやることが理解できるようになっていた。
 ミミリは、うきうきしていた。
 バ―ジル・マクレインとはいいコンビになれたと思う。
 不謹慎だが、事件の最中。ミミリは、死と隣り合わのこのスリリングな状況を、楽しんでいた。自分が生きていることを強く実感で来たから、人の役に立っていると実感できたから。
 ただし、結末は酷いものだった。
 事件解決に費やした時間と努力も虚しく、”全てがお釈迦になった”のだ。
 
 全ての爆弾の解体が終わったあと、犯人から電話がかかってきた。
『ハハハ、おめでとう。よくやったねぇ、二人とも。素晴らしく涙ぐましい奔走劇だったよ』
「クソッタレの覗き野郎め。このシャトルを降りたら、テメェの所に真っ直ぐ飛んでいってぶん殴ってやる。首を洗って待っていやがれ」
『まぁ、まちたまえ。最初に、これはゲ―ムだと言ったろう?
全ステ―ジをクリアした君たち凸凹コンビにボ―ナスゲ―ムをプレゼントしよう』
「なんだとぉ?」
『私たちが仕掛けたあの爆弾な。信管信号以外にも、特定の座標に到達すると起爆するギミックが施してあるんだ』
「ええ―――!?」「なにぃ――っ!?」
『あと、三分ほどで小惑星帯付近にシャトルが到達する。そこがタイムリミットだ。
まぁ、せいぜい頑張って処理してみせることだな。ハハハハハ』
 それっきり、犯人からの連絡は途絶えた。

 小惑星帯付近に差し掛かる際、機内はエマ―ジェンシ―が掛かり席からの離席が禁止される。 シャトルの乗務員に爆弾のことを報せればいいのかもしれないが、それは禁止事項である。
犯人が仕組んだこのゲ―ムには、ル―ルがいくつかあり、爆弾の存在を当事者であるミミリとマクレイン意外に知られたら爆発――『ゲ―ムオ―バ―』と言う縛りもあったのだ。
 こっそり外部や他人に報せようとしてもそれは不可能。犯人はシャトルの監視カメラにハッキングしてこちらの動向を築一監視している。
 おまけに、旅客機会社に潜んでいた犯人の協力者の手により、事前に盗聴マイクと波形探知センサ―が機内のそこかしこに埋めこまれているという手の込みよう。
 爆弾は非常に精緻に作られていた。位置座標起爆型のパッシブタイマ―は複雑な造りで、素人にはとうてい解体できるような仕組みにはなっていない。
 無力化不可能。――残された時間はあまりにも少なかった。 
「ちくしょう。クソッ…!クソッたれめッ!」
 マクレインその場に膝を着き、項垂れた。
 考えれば考えるほど、袋小路だった。落ち着いて考えれば打つ手もあるのだろうが、極限の状況がその冷静さをマクレインから奪い去っていた。
「ふぅ。この期に及んで、また愚痴ですか?」
 ミミリには分かっていた。それがいつもの愚痴ではないと。分かっていて、絶望に打ちひしがれるマクレインを鼓舞するつもりで煽ってみたのだ。
「ちげぇよ。…悔しいんだよぅ、悲しいんだよぅ。頭に来る女房だけどな、それでもアイツは…アイツと息子は俺にとって大切な家族なんだ。見捨てることなんて出来ねぇよ…。
助けてやりたいんだ。…頼む、ミミリ。俺に力を貸してくれ…!」
「えへへ。はい、もちろんですよ。バ―ジルさん。だから、顔を上げてください。作戦、思いついたんです」
 鼻をすすって涙声で懇願するマクレインに、ミミリは笑顔で応えた。

 作戦と言うには簡単で、爆弾の処理方法は実にシンプルなものだった。
 貨物室に降りて、そこにある機外に出れるメンテナンス用扉から、宇宙に爆弾を投棄する。 機内との気圧差で、あとは勝手に爆弾は機外に吸いだされるはず。アタッシュケ―スに、AQUA―S用の推進ロケットでも付けてやれば確実だ。
 二人は、機内に備えてあったAQUA―Sを拝借して、上着の下に着込んだ。
 機内にエマ―ジェンシ―が掛かる五分前。
 乗務員たちに見つからないよう、気取られないよう、二人は貨物室を目指した。
 指定席に着席していない客がいると判るのも時間の問題。それが発覚すれば、乗務員達は自分たちを探し回りにくるだろう。
 
 ――余りにも事が順調に進んでいたせいか、ミミリは暫く失念していた。自身の体質を。