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ミムロ コトナリ
ミムロ コトナリ
novelistID. 12426
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マジェスティック・ガールEp:1 まとめ

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2.



 プランタリアに入学してから三十八日後のことである。
 
 三日後に迫ったその日は、亡くなった両親の命日だった。
 プランタリアの眼下に映る惑星。八番目の地球<エイス・イルシャロ―ム>へ行こうと、ミミリは思い立った。どうしても、バ―ベナの街にある両親の墓参りに行きたかったのだ。
 遠出して出かけるときは、必ず一緒に二人でという約束をツツジと交わしていた。
 不思議なことに、ツツジと一緒の時だけトラブルに巻き込まれる確率がぐっと減るのだ。
 ツツジが言うに――「私は”ツイてる”からね。幸運の女神様なのよ。その前なんて、ガんガり君(アイスバ―)のアタリを三本連続で引いたんだから。どうよー、この幸運!」――との事で、不運を引き寄せるマイナス体質の自分と、幸運を呼び寄せるプラス体質のツツジが合わさることでプラマイゼロになり、”世は事もなし、無事平穏”になるという。
 
 出かけるその日、ツツジは風邪を引いて寝込んでいた。当然、一緒に出かける予定だったが、調子の悪いツツジを連れて行くわけにもいかない。
 ミミリはこの日を逃せば当分、他所に出かける暇など作れないと考えた。
 休み明けからは、第一回目の中間査定試験が始まる。
 試験期間中の一週間、マジェスターの学生はプランタリアからの外出を禁じられる。
 だから、一人でも、無理を押してでも、どうしても行きたかった。
 
 当日。ミミリは、決心した通り一人で出かけることにした。
 部屋の玄関口に差し掛かったところで、誰かに上着の裾をぐいと引っ張られた。
「まぁちぃ…なさぁ〜い、ミミリ。どこに…いくつもりよぉ〜…」
 こっそり出かけるつもりだったが、ツツジにはやはりばれていた。
「あ…そのう。ツツジ…。あぅ、あぅ。…ごめんなさいっ」
 弱々しく服の裾を掴み、しがみついて制止しようとするツツジを振り払い、ミミリは寮を飛び出した。玄関口にばたりと倒れ込むツツジを振り返りもせず、パタパタと。
「うぁ―…、こらぁ〜。バカミリ〜…まちな…さいって…。あ、だめ…ガクッ」
(ごめんね、ごめんね。ツツジ…!)
 それが、一年以上の別離になるとも知らず。

   ◆   

「ど…どうしましょう。これ…」
 ミミリは、シャトル機内のリネン室で、黒いアタッシュケ―スの中身を見て戦慄していた。
 その事件は、ミミリがエイス・イルシャロ―ムに降りるため乗り合わせたシャトルで、不審な男が妙な黒いアタッシュケ―スを機内に持ち込む所を目撃したのが始まりだった。
 アタッシュケ―スの中身は、一見してそうとは分からないほど精巧に偽装された小型高性能爆弾だった。
 ミミリは大気を操るフリ―ジア属。
アタッシュケースから漂う”空気の偏り”で、それが爆弾だと言う事を見破ったのだ。

 あれは、あまりにもフィクションじみた出来事で、
尚且つ映画の様に劇的で、とてもセンセ―ショナルな出来事だった。
 爆弾を仕掛けた犯人グル―プに家族を人質に取られて、泣く泣くこのシャトルにやってきた連邦捜査官バ―ジル・マクレインとの出会い。
 マクレインは、とある事情で犯人の恨みを買っていた。この爆弾テロ事件は、犯人のマクレインに対する復讐でもあったのだ。
 第一発見者であるミミリは、なし崩し的に彼に協力することになった…のだが。
「ったく、なんで俺がこんな目に。いっつもこうだ、クソッタレ」
 マクレインは事件に巻き込まれたことに関して、暇さえあれば愚痴っていた。
(…ネガティブな人だなぁ)
 当初、しきりに愚痴をこぼすネガティブなマクレインに、ミミリは悪い印象しか持てなかった。当然、ポジティブが信条であるミミリと彼の相性は最悪。ことあるごとに衝突し、いがみ合う始末。
「マクレインさん、さっきから聞いていれば愚痴や不平ばっかりじゃありませんか!
それでも連邦捜査官なんですか。奥さんや息子さんを助けるんでしょう。
そのために、このシャトルに乗ったんじゃないんですか!?」
「うるせぇ、ガキぃ!俺に説教たれようってのか、このチンチクリンめ。妻とはもう別れたんだ、おまけに俺は裁判に負けて、息子の親権はアイツのものだ。汚い手で、俺を羽目やがったんだあの女。なんで、あんな奴のために俺がこんな危険な目にあわなきゃいけない。本当に、踏んだり蹴ったりだぜ。…ったく、”最高のシチュエ―ションだ”」
「あの…お客様」
 二人がやりとりをしている所に、乗務員がやってきた。
マクレイン宛に電話が届いているとのこと。子機を渡すと乗務員は後ろに下がった。
「ハロ―。どちらさん?」
『こんにちは。先日は、俺の兄弟が”世話になった”ようだね』
 電話の主は、爆弾をしかけた犯人グル―プのリ―ダ―であった。 どうも彼が語るには、これはゲ―ムだと言う。
『そのアタッシュの中身は見本だ。それと同じ小型爆弾を機内に九つ仕掛けた。制限時間は二時間二十分。その時間内に全ての爆弾を見つけ出し解体してみせてくれ。アタッシュの中に九つの窪みがあるだろう?回収した爆弾はそこにセットして保管して欲しい。爆弾のありかに関してはヒントを出す。それに付いては、あとで説明をしよう』
「つまんねぇこと言ってんじゃねぇ、さっさと爆弾の在り処を教えやがれ。この変態野郎め」
『そうがなるな、野蛮人か君は。そうそう。参加するに当たって、ル―ルと条件が三つある。それと、基本的に質問は許されない。こちらの言う事には黙って従え。さもなくば、わかってるよな?』
 実質、このシャトルに乗る自分たちを含む全員が犯人の人質ということだ。
 マクレインは、犯人を刺激しないよう務めなくてはと、思い直した。
「…ああ、わかった。で、ル―ルというのは?」
『誰が質問していいといったこのダボがァッ!話を聞いていなかったのかゴミクズめ。
どちらにイニシアチブがあるか、わかってんのかァァアッ!?』
 いきなり犯人が激昂した。その怒声を聞いてマクレインはしまったと思い、青ざめた。
「わ…わかった。すまなかった。大人しく従う」
『ふぅ、まぁいい。間違いは誰にだってあるさ。では言うぞ。まず一つは、携帯端末を捨てること。加えて、機内の電話で外部と連絡を取ることも許されない。持っているなら、今この場で破棄したまえ。おっと。捨てたふりをしたり、隠し持っていたりして誤魔化すなよ』
 マクレインはそれにギクリとした。それを見越して予備の端末を持っていたからだ。
『二つ目は、爆弾の存在を君たち二人以外の人間に知られてはいけない。乗客は愚か、乗務員に知られてもアウトだ。ただし、こちらがヒントを与えて解除を指定した爆弾に限る。
それ以外は見つかってもノ―カンだ。
ちなみに、君たちの動向は、機内に設置した”目と耳”で築一監視している。コソコソと動いて変な気は起こさないことだ。
三つ目は、こちらの連絡には必ず応えること。十五分毎に一回連絡を入れる。使うのはプリペイド型の端末だ。鳴ってから一分半こっきりでバッテリ―が切れるよう細工してある。
そこで、爆弾と次の端末のありかのヒントをだす。時間内に出れなければ、アウトだ。
端末は、機内のそうとは分かりにくいところに隠してある…――』