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ミムロ コトナリ
ミムロ コトナリ
novelistID. 12426
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マジェスティック・ガールEp:1 まとめ

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3.



 その日は<キルハウス>と呼ばれる、家屋や建築物を模した演習場を用いての、連携訓練が行われた。
 三人三組のユニットを組み、九人のチ―ムで、建造物内を徘徊しているアクトゥスゥ変異体を撃滅するという仮想状況下での訓練だった。
 訓練の目的は、小隊規模での連携とカバ―、制圧時間の効率化を図ることにある。
 この訓練で求められるのは、集団行動下でのセオリ―の理解度。状況に対する素早い対応力と思考の切り替え。肉体以外にも、常日頃、頭脳と思考力の鍛錬に勤しんでいるかどうかも試されるという訳だ。
 ミミリ達の出番がやってきた。
 ミミリが所属するグル―プは順調に指定されたクリアリング条件を達成し、仮想エネミ―を撃破して行き、家屋のフロアを制圧していく。
 最後のフロアにたどり着いた。
グル―プ内の恰幅のいい六期生が、フロア内最奥のタ―ゲットドロ―ンにアサルトライフルを発砲した。三点バ―ストによる斉射。
 弾丸のニ発はタ―ゲットに命中。一発はその脇を逸れ、外れ。背後にある、ハウスを支える柱を繋ぎ留めているネジに当たった。
 その時だった。全てが上手く、全ての状況がぴったりと噛み合い、それは起きた。
 
 訓練の前日の夜、この訓練の担当教官であるマイクロフトは部下を連れ立って、キルハ ウスの整備点検を行っていた。その途中、彼の携帯端末にコールが掛かった。
 マイクロフトは電話の用件を済ませる為、後を部下に任せ、職員棟に戻っていった。
 確認したリストの整備項目には全てチェックが付いていたが、それは完全ではなく『穴』 があったのだ。単純な見落としと怠慢による、ヒューマンエラー。それは――。

 ネジは緩んでいた。厳密には、それを固定するナットが、だが。
 ナットは、弾丸の直撃で緩み、外れ。飛んだ。飛んだナットは、後続のメンバ―が発砲したアサルトライフルの弾丸とかち合った。二つはぶつかり合い、跳弾となって部屋中を飛び跳ねる。
 ナットは先だって部屋に入ったガタイの良い男子の腹に直撃。彼は尻餅をついて倒れこんだ。
 弾丸はキルハウスの窓ガラスを突き破り外へと飛来。そして、たまたま付近を通りかかったガス配送業者がリフトで運んでいたガスボンベに直撃。ボンベに亀裂が入り、ガスが漏れ出した。
 まだ、『連鎖』は続く。
 尻餅をついた男子が床に倒れこむ途中。その指が、傍にいたミミリの、腰部ラックにセットされていたスタングレネ―ドのピンに引っかかった。
 ピンが抜けたスタングレネ―ドを見た一人の生徒が慌ててそれを窓の外に放り投げた。
 スタングレネ―ドは、宙空で炸裂し大気中に漂い沈殿していたガスに引火。
 そして――。
 ガス爆発を起こし、キルハウスの一角を吹き飛ばす。
 その一部始終を監視カメラで見ていた、担当教官のマイクロフトは、口をあんぐりと開いて『信じられない』といった表情でこう漏らした。
「…オゥ…。アメ―ジング…」
 火傷三名、軽傷二名、打撲一名。惨憺たる事故となった。
 ミミリは、とっさに能力で空気の膜を貼り数名の生徒ともに難を逃れていた。

    ◆   

「そりゃ―考えすぎよ。ただの偶然じゃぁないの?」
 メ―ルフォン越しにツツジが、馬鹿馬鹿しいと言わんばかりに答えた。
 ミミリは、自分の周りで最近、大小問わず様々なトラブルが頻発していることを彼女に相談してみたが、彼女が寄越した答えは実にそっけないものだった。
「えぇ―。そうでしょうか…」
「そうよ―。あまり気にしないほうがいいんじゃぁないの。毎回毎回、必ずってわけじゃないんでしょ?」
「ええ、まぁ…。いや、そういう訳ではないんですけど…。ん―、なんて言えば言いのかなぁ。とにかく間が悪いんです。絶対なんかありますよ。悪い霊に取り憑かれてるとか」
「んな非科学的な。気にしすぎよ―。世の中、絶対なんてことは絶対ないんだからさ。
私、そういう決めつけって大っキライなのよね。自分の境遇や努力した結果が悪かったからって、他人や周りのせいにしてるみたいでさ。なんか、負けた気分じゃない?」
「はぁ…まぁ、ツツジらしいですね、そういうの」
「でしょ―う。ま、気を落とさず頑張りなさい。あ…!ごめん、もう時間だわ。それじゃぁね、お休み。ミミリ」
 ――そんな風に思えれば、どんなに楽か…。
 ミミリは、深いため息をついて、端末の電源を落とし、ベッドに潜りこんだ。