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看護師の不思議な体験談 其の十四

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 手のひらサイズの棺なんてものはない。
 真っ白な紙で作られた箱。ちょうど靴を入れる箱のようなサイズ。
 児の大きさに合わせて、スタッフが手作りで作成する。手慣れた手つきのスタッフは、それだけ胎児の死に出会ってきたということだ。
 ドライアイスを敷き詰め、ガーゼや生花でベッドを作る。大人が亡くなった時に顔にのせる白いレースつきの布。あれは、胎児のふとんにちょうどいい大きさになる。
 バラバラだった体と頭を、ちょうどいい位置に固定し、両手を胸の前で組ませた。
「よく頑張ったね…。」
 通常は、すぐに両親のもとへ面会に御連れするのだが、Bさんには、
「顔を合わせる勇気がない。」
と、一旦拒否されたので、しばらくこちらでお預かりすることにした。
 どこへ安置しておくかというと、胎児の場合は薬品や胎盤を保管している冷蔵庫にてお預りする。
「狭いし、寒いよね。ごめんね…。」
 そう言いながら、冷蔵庫の扉を閉めた。


 自分の受け持ちは、Bさんだけではない。その都度気持ちを切り替える。
さっきまで、亡くなった胎児を抱いていたのに、今は授乳をしているお母さんの前で笑顔で、冗談を言いながら楽しい時間を過ごす。退院の患者様には心からの『おめでとうございます』を伝える。
(いつの間に、こんな風に切り替えれるようになってしまったのか。)
 私も、新人たちのような真っ直ぐな心があったはず…。
 目の前のことしか見えてないっていったらそうなのだが、1対1の看護ならば、あの頃の方が患者様と大きく共感することができていたんじゃないだろうか…。
 経験年数を重ねると、増えるスキルもあるが、減ってしまうスキルもあるのではないだろうか。
(あー、まずい、超マイナス思考になってる…)