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看護師の不思議な体験談 其の十四

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 医師への連絡を行い、分娩台の上で体位を整え、新しいシーツをひく。
 いつもの通常分娩とすべき処置は同じなのだ。ただ、娩出される児が生きているか、亡くなっているかの違いだけ…。
 医師が到着する頃に、胎児の体幹は娩出していたが、案の定、頭部がひっかかっていた。母親の膣から小さな体がだらりと垂れ下がっている。赤黒い肌、透けて見える毛細血管、爪もうっすら見えている。陣痛は来るが、子宮口がもう少し開大しなければどうしようもない。
 陣痛に耐えるBさん。通常の分娩ならば、『もうすぐ赤ちゃんに会えますから、頑張って!』などの言葉や笑顔が飛び交う瞬間。今は、誰もが無言だった。
夫だけが、『ごめんな、ごめんな』とつぶやきながら、Bさんの手を握っていた。

 私が体幹を支え、医師が懸命に、器具を使って頭部を娩出させようと試みる。すでに死亡している胎児のため、医療的には別に頭部や体がバラバラになろうと構わないのだけれど、ただ、そこは医師の倫理観が絡んでくるのだと思う。丁寧に、できるだけお腹にいた時の状態で外にだしてあげたいという、患者さんへの思いやりのもと、医師は行動していた。