看護師の不思議な体験談 其の十四
今日の日勤スタッフは言動がいつもに増して、緊張感にあふれていた。
なぜなら本日は死産が1件予定されているからだ。
患者Bさんは、今回初めての妊娠で、昨日妊娠18週にて胎内死亡の診断を受けた。経膣にて本日分娩予定だ。
Bさんを受け持ちし、部屋へと向かう。
できるだけ産後の人たちとは離れた部屋となるよう配慮されている。Bさんの部屋の前で大きく深呼吸。
「失礼します。」
医師とともに部屋へ入ると、BさんとBさんの夫が泣き腫らした目でぼんやりしていた。昨日、胎内死亡を宣告され、一晩中泣き明かしたのだろう。
Bさんへ、今日の流れを説明する。返事はするものの、内容はあまり頭に入ってないだろう。
死産の場合、妊娠週数や胎児の大きさにより、娩出方法は様々である。Bさんのように、ある程度の大きさがある場合は、手術ではなく、薬剤を使用して人工的に陣痛を起こし、児及び付属物を娩出させる。
医師の診察と説明が、淡々と行われ、Bさんへ薬剤が投与された。
しばらくは体には何の変化もないため、一旦部屋で休んでいただく。
「私が担当になりますので、一緒に頑張りましょうね。」
「……」
どんな言葉を言ったって、今は上っ面のように聞こえてしまうだろう。一緒に、今日を乗り越えたいという気持ちは勿論あるが、結局Bさんの気持ちはBさんにしか分からない。
私たちにできることは、できるだけBさんの気持ちに寄り添うよう努力するのみなのだ。そして、できるだけ、前向きな気持ちで退院ができるよう支援を…。
作品名:看護師の不思議な体験談 其の十四 作家名:柊 恵二