看護師の不思議な体験談 其の十三
仮眠は一人90分以内。臨機応変に変更するけれど、できるだけ全員が体を休めるように配慮する。
(今日は比較的に落ち着いているし、きちんと休めるかな。)
そう思っていたら、ナースコール音が響いた。
見ると、陣痛室のランプが赤く光っている。
(陣痛室?Nさんが間違えて押したの?いや、まさか。)
Nさんが仮眠に入ってまだ30分程度。とりあえず様子を見に行った。
懐中電灯を手に、陣痛室の扉をそっと開ける。
「Nさん、大丈夫?」
そうたずね、Nさんがふとんにくるまっているのが見えたが、様子がおかしかった。
「ヒッ、ヒィッ、ヒィッ…」
おかしな呼吸音が小さく聞こえた。慌てて電気をつけた。
Nさんはふとんの中で手足を震わせていた。焦点も合わない。
(過呼吸起こしてる…)
ナースコールをNさんが握り締めており、それを奪った。再度押して、もう一人のスタッフを呼ぶ。
「ごめん、ビニール袋もってきて!」
同僚もNさんの姿にかなり驚いた。
ビニール袋を口元に当て、呼吸を誘導する。
徐々に回復したが、Nさんの目からはポロポロと涙が溢れ出る。
作品名:看護師の不思議な体験談 其の十三 作家名:柊 恵二